細かいディテールはここで押さえておきます
よくわかる
スーツ用語事典
着心地が良く動きも軽快、しかも男前を格上げする理想的なスーツをゲットするには、基礎知識が必要だ。スーツのパーツやセクション、ディテールを知り、基本用語をしっかり覚えれば、店頭でのスーツ選びにきっと役立つ!
[JACKET]
ジャケット
ジャケットは顔に近い重要なディテールが多いため、わずかな微差でも印象を変えてしまう。つまり要注意項目ばかりなのだ。
❶
ゴージライン
衿の上下(カラーとラベル)を縫い合わせた部分のこと。位置が高ければシャープに、低いとクラシックで落ち着いた印象になる。
❷
ショルダー
体とのフィッティングの基準となる部分。製法や肩パッドの有無によって、ジャケット全体のシルエットの印象を決定づける。
ナチュラルショルダー
パッドなし、または薄いパッド入りのショルダーのこと。アメリカントラッドの基本仕様だ。
マニカカミーチャ
パッドがないため、なだらかなシルエットになる。動きやすいのが特徴で、クラシコイタリアに多い。
コンケーブドショルダー
コンケーブドとは「凹んだ」という意味。肩の先端が反り返っていて、モードブランドで頻出。
❸
フラワーホール
もともとは衿を風防として立てるために止めていたボタン穴。その名残に、現在では社章やアクセサリーを付けることが多い。
❹
ポケット
実用的なものと捉えられがちだが、じつは飾りに近いものとして考えるのが正解。フラップ(蓋)の有無などがTPOを左右する。
玉縁ポケット
フラップがなく、口の上下に他布で縁を付けたポケットのこと。スタイルとしては、もっともフォーマルな仕様だ。
チェンジポケット
もとは小銭入れとして使われていたディテールの名残。一般的には、右の脇ポケットの上にあることが多い。
ウェルトポケット
箱ポケットともいい、縁に飾り布をつけた胸ポケットの定番だ。比較的TPOを問わないので、幅広く使われる。
フラップポケット
フラップには、ホコリや水の浸入を防ぐという機能がある。トラディショナルスーツでは定番のポケットだ。
パルカポケット
構造はウェルトポケットと同じだが、こちらは斜めに取り付けられている。飾り布の角が鋭角な形状が特徴。
パッチポケット
外側から別布を張り付ける構造になっている。もっともカジュアルな形状で、ブレザーなどに多く使われている。
❺
フロントダーツ
ジャケット胸部からポケットにかけて、つまみ縫いをしたライン。シルエットに立体感をもたせ、体にフィットさせる機能がある。
❻
ラペル
下衿のことで、ジャケットの印象を決める重要なポイント。形状によってフォーマルの度合いも変わるため、慎重に選びたい。
段返り
3つのボタンの一番上のボタンホールが、折り返っているタイプ。第1ボタンはあくまでも飾り。
フィッシュマウス
衿のきざみが「魚の口」のような形状。3釦と相性がよく、オーダースーツのオプションに多い。
ピークドラペル
その名のとおり、衿の先端が上を向いた剣(ピーク)のような形状。フォーマルなジャケットに多い。
❼
アームホール
見頃と袖の接続部。「大きい=可動域が広くて動きやすい」というのは誤解で、ジャストサイズを着用するのが正しい着こなし方だ。
❽
裏地
表面を保護し、ジャケットの着脱をスムーズにするため、滑りのよい生地が用いられる。色や柄によって印象を自在に演出できる。
フルライニング
裏面全体に裏地がある仕立てのことで、総裏ともいう。裏地が傷みにくく、透ける心配がないのがメリット。
背抜き
背の部分の裏地を排した仕様。通気性が高く涼しいというメリットがあるため、夏に用いられることが多い。
お台場仕立て
内ポケット周辺を表地で覆う仕立てのこと。手間がかかるため、現在はほぼオーダーメイド仕様となる。
大見返し
見返しの範囲を広くとったデザインのこと。裏地の範囲が少ない分軽量化でき、また通気性も高くなる。
❾
袖
スリーブ/カフともいい、さまざまなデザインが存在する。ボタンの数や種類、取り付け方などによってスタイル分けされる。
本切羽
「ほんせっぱ」と読む。ボタンの開閉が可能で、袖口を開くことができる。オーダーメイドに多い。
開き見せ
カジュアルスーツに多い仕様で、袖口の開閉はできない。丈直しが容易に済むメリットがある。
キッシュボタン
ボタン同士を重なるように取り付けたもの。イタリア系の職人たちが、腕を競うために始めた。
[PANTS]
パンツ
腰まわりにディテールが集中しているため、体に合わせるのが難しく工夫が凝らされている。各ディテールの役割を押さえることが大事。
❶
タック
腰の前後左右にあるヒダのこと。腰まわりの可動域を広げ、クラシカルな趣を加える。スリム志向の近年はノータックも定番になった。
ノータック
タックがないパンツのこと。ゆとりが少なく細身のシルエットになるので、カジュアル寄りの印象になる。
ワンタック
左右にタックが1本ずつ入るスタイルで、もっともスタンダードな仕様。普段使いからフォーマルまで対応可。
ツータック
左右に2本ずつタックが入る。ゆったりしたシルエットになるため、見た目はクラシカルな雰囲気に仕上がる。
❷
ライズ
いわゆる股下のことで、ウエストラインから股下までの長さをさす。クラシックなものほど長いが、近年はローライズが主流だ。
❸
フライ
前立ての部分。ビジネス用パンツの大半を占めるジッパー式と、ボタン留めのものがあり、基本的には比翼仕立てで覆われている。
❹
わたり
パンツの太腿の付け根のサイズ。「わたり幅」はパンツを平置きした時の太腿付け根の横幅で、「わたりまわり」は太腿の周囲のこと。
❺
ウエスト
お腹まわりのサイズ。腰位置をしっかり決めることが重要で、ベルトを締めたらパンツと体の間に掌がひとつ入るゆとりが適正。
❻
ポケット
左右のヒップや脇にあるポケット。ジャケットと同じく、モノを入れるならシルエットに響かないハンカチ程度に留めること。
❼
裾
シングル、ダブルと2タイプあるが、近年の細めのパンツでは主にシングルが多い。丈の長さを決める基準のひとつでもある。
シングル
裾に折り返しがないスタイル。フォーマルな仕様だが、普段のパンツにも用いることもできる万能型だ。
ダブル
裾を折り返す仕立てで、一般的な幅は約4cm。ビジネス系に多く、ややカジュアルなスタイルになる。
❽
ベルトステイループ
ベルトを通すための輪で、通常は6本。フォーマルなパンツでは、ループがないものもある。摩擦等で比較的傷みやすい部位だ。
「ピンループ」と呼ばれる小さなループ。ベルトのピンを通すことで、バックルが左右にズレない。
[SHIRT]
シャツ
シャツからは首・手首と、目を引きやすい部分ばかり露出している。なので、おしゃれな姿には的確なフィッティングが重要になる。
❶
台衿
衿の土台となる帯状のパーツ。高さや先端の曲線によって衿の立ち方が変わる。タイの太さやジャケットの上衿とのバランスが重要。
❷
前立て
前身頃のことで、フロントともいう。前の合わせ部分の端が内側あるいは表側にあるもの、比翼仕立てのものと、大きく3種類ある。
❸
ヨーク
肩から背中に伸びる切り返し部分を指す。シャツのフィット感を生み出すキモの部分で、幅が広いほどカジュアル度が増していく。
❹
ダーツ
背面の左右に垂直に伸びるつまみ縫いのライン。つまんだ幅が広いほど体にフィットし、立体的でタイとなシルエットになる。
❺
カフ
袖口の部分のこと。ボタン一つで留めるシングルカフが定番だが、他にもバリエーションが豊富で個性を発揮しやすいパーツだ。
ラウンド
角が丸みを帯びた、もっとも一般的な形状。ラウンドが小さいものが主流だが、大きいものほど優雅に見える。
円錐
角が大きなラウンド状にカットされていて、ボタンを留めると先端に向けて細くなる。フィット感が高い型だ。
カッタウェイ
別名「角落ち型」と呼ばれるタイプ。角を斜めにカットした形状から、シャープで新鮮な印象をあたえる。
アジャスタブル
ボタンが2つあり、その名のとおり手首の太さを2段階調整(アジャスト)できる。既成シャツに多い。
コンバーチブル
ボタン側にもホールがあり、カフスボタンと両用が可能なタイプ。また、ボタンが2つあるタイプもある。
ターンナップ
端に折り返しがある形状のカフス。ボタンが隠れるのが特徴で、スマートな印象をあたえるというメリットあり。
❻
カラー
いわゆる衿の部分で、全身の印象をも左右する重要パーツ。微妙な形状の差で細分化されており、対応するTPOもさまざま存在する。
ワイド
衿の開きが100~140度ほど。このシャツには太いタイや、結び目が大きいウィンザーノットがよく似合う。
セミワイド
衿の開きが90度ほどで、レギュラーとワイドの中間のタイプ。ブリティッシュな仕様のシャツに多い。
レギュラー
衿の開きの角度が75~90度ほどの標準的な形状。角度は時代の流行によって変化するので、店頭で確認すること。
ボタンダウン
衿先をボタン留めしたもの。本来はカジュアルな仕様だが、近年は夏のビジネスシーンに増加している。
ピンホール
両衿にピンを通し、その間をタイが仕組み。ノットが底上げされるので、立体的に見えるメリットがある。
ウィング
衿全体が立ち上がり、先端のみを折り返した形状。タキシードなどフォーマルな装いによく用いられる。
ホリゾンタル
“水平”という名前どおり、開きが180度に近いのが特徴。ジャケットで衿の先端が隠れると、小衿に見える。
ラウンド
衿先が丸いクラシックな仕様。カジュアルな印象が強くなるので、ビジネスシーンでの着用は注意が必要だ。
[MATERIAL]
素材
季節に合わせた素材選びが基本だが、素材によって着心地や見た目も変わってくるし、シーンによって適・不適もあるので要注意。
カシミア
高級絨毯にも使われる素材の“王様”。少量しか取れないことから非常に高価になるが、保湿性が高く、優しい着心地は別格だ。
ウール
ビジネススーツにもっとも用いられる素材。通気性と保湿性がほどよいバランスなので、生地の厚み次第でオールシーズンに対応する。
ウールシルク
ウールとシルクを混紡した素材のこと。ソフトな肌触りと、適度な光沢感が特徴だ、秋冬向けのビジネススーツとして、よく使われる。
ウールモヘア
モヘアだけで紡績するのは困難なため、ウールとブレンドすることが多い。シルクに似た光沢となめらかさ、そして軽い着心地が魅力。
コットン
通気性はそこそこ高いので、春夏向けスーツの素材として用いられる。また、ウールやシルクに比べて、見た目はラフな印象になる。
コットンリネン
コットンとリネンを織り交ぜた素材。どちらも通気性が高いので、着心地は涼しくて快適。風合いは、ややカジュアル向けになる。
コットンポリ
コットンとポリエステルを織り交ぜた生地のこと。適度な通気性があり、摩擦に強いのが特徴で、カジュアルなシーンにマッチする。
リネン
通気性抜群なので、夏向けスーツに最適の素材。適度なシャリ感とさらっとした手触りのおかげで、肌にべとつかないのも夏向けだ。
[PATTERN]
柄
柄の選択を間違えると、場違いな印象を与えてしまう。ストライフ幅や格子の大きさは、体とのバランスとTPOに配慮して選びたい。
ウインドーベーン
細い線を直角に組み合わせ、大きめの長方形を作る。カントリー調の代表ともいえる格子柄で、クラシカルな着こなしによく似合う。
グレンチェック
2色の色で2通りの細かい格子柄を組み合わせた、クラシカルな印象の生地。ブリティッシュならではの気品のある佇まいが魅力だ。
オルタネイトストライプ
幅や形状、色などが異なる線を交互に配した縦縞。華やかな印象を与えるパターンで、しかも生地のシワが目立たないのが魅力だ。
ペンシルストライプ
文字どおり鉛筆で描いたようなタッチの線が特徴。ピンストライプよりも線が主張し、どちらかといえばカジュアルな印象になる。
シャドーストライプ
生地の織り方に変化をつけることで、縞模様に見せている。よく見ると縞が入っているが、遠目では無地のため、ビジネスに好適。
チョークストライプ
チョークで描いたような太い線。ペンシルストライプと違って滲んだようなニュアンスをあたえるのは、起毛生地の風合いが要因だ。
千鳥格子
日本の古典柄でもあり、名前の由来は「千鳥が連なって飛ぶ」ように見えるから。英語では“猟犬の牙”の意味の「ハウンドトゥース」。
ヘリンボーン
対象的な斜めの線が交互に並び、まるで魚のニシンの骨のように見えることから、この名前がついた。日本語では杉綾とも呼ばれる。
ピンストライプ
ピンで打ったような細かい点線の縦縞。その縦縞の間隔が狭いのが特徴で、スマートで上品な印象をあたえる。ビジネスによく似合う。
バーズアイ
細かい丸を刻み付けたような、変わり織りの一種。千鳥格子やヘリンボーンのように、クラシックスタイルによく用いられる。
[FABRIC]
生地メーカー
生地メーカーには、自社ブランドを持っている織物工場と、織物工場と契約してテーラーに生地を流通している2タイプがある。
ロロ・ピアーナ
「最高の品質のみを保証」をコンセプトに、常に最高の原料を扱う。とくにカシミアに関しては、世界最高レベルといっても過言ではない。
レダ
最新のトレンドを意識した生地を発信するのを得意としている。生地はしなやかでハリがあり、またコストパフォーマンスが高いのが特徴。
カノニコ
ビエラ地方で創業。品質に一切の妥協をせず、年間で膨大な生地を生産することが凄い。有名ブランドの中に、この生地のファンが多い。
ドーメル
1842年に繊維商として設立。以降、革新的なコレクションを提案し続けているフランスの名門。世界中のセレブリティから支持されている。
エルメネジルド・ゼニア
原材料に超細番手の羊毛を厳選し、紳士服用の高品質&高級マテリアルを生産する名門。まさしく世界最高峰の生地ブランドといえる。
チェルッティ 1881
イタリア・ビエラ地方に織物工場を設立した老舗メーカー。旬を捉えた生地作りを得意とし、製品はどれも高品質かつエレガントだ。