2019.05.15
松坂桃李と杉野遥亮が『居眠り磐音』で師弟関係に?
『FINEBOYS』6月号に登場した松坂桃李と杉野遥亮。2人の共通点といえば“FINEBOYS本誌専属モデル”。2008年から約3年間務めた松坂と現在進行形の杉野が、時代劇映画『居眠り磐音』で共演。2人で映画の魅力を語り合っていく内に、対談は悩める杉野を松坂が癒すセラピーと化していく!
――『居眠り磐音』は、2017年公開の『キセキ ーあの日のソビトー』以来の共演。
松坂:『キセキ』の時は、杉野はまったく緊張してなかったよね。
杉野:あの頃は何も感じてなくて、もったいないことをしたって後悔してます。
松坂:現場で寝るわ、(宣伝の)配信番組で無だわ、試写会は遅刻したもんな!
杉野:あの日は早朝から『FINEBOYS』の撮影があったんですよ。試写会まで時間があるからって渋谷の漫喫に入ったら寝てしまいまして……。マネージャーさんからの電話で起きました。あれは今でもトラウマです。
松坂:ってくらいひどかったけど(笑)、『居眠り磐音』の現場では全然違ってた。『キセキ』の時にはなかった緊張感であったり、仕事への明確な意思が前面に出てて、ここまでいろんな現場を踏んできたんだなって感じた。
杉野:今回は、好きな先輩に成長した自分を見てもらいたいと思っていて、それが気負いになった部分もあったんですけど。撮影所のある京都に向かう道中の新幹線はいつも緊張してましたし。
松坂:その緊張感は、死と隣り合わせの時代を生きる人物を演じてたからじゃない?
杉野:それもあるかも。でも、現場に着くと安心もできたんですよね。デビュー前から僕のことを知ってくれてる先輩が座長としていて、松坂さんを中心に現場がまとまっていくのを見ることができたんで。
松坂:物語を動かすことのできる“真ん中”をやらせていただく以上、監督やスタッフさんと密に過ごして、現場の熱量を絶やさないようにしようとは思ってたかな。
――時代劇ということで、現代劇とは違った大変さがあったのでは?
松坂:立ち回りは大変でした。その分、印象も強いですね。とくに(佐々木)蔵之介さんとのシーン。蔵之介さんは、道場の師範役なんですが、威圧感があまりにすごくて転んじゃったんです。「ああ、やっぱり勝てないな」と。立ち回りが会話のように感じられました。
杉野:僕は、琴平と対峙するシーンで、感情を保つのが大変でした。演じた柄本(佑)さんは、テストで100%を見せてくれたんです。それが本番では120%になってて、飲み込まれそうでした。あのシーンは、完全に柄本さんに引っ張ってもらいましたね。
松坂:杉野の年で、佑さんと対峙できる機会なんて、めったにないからな! キネ旬(キネマ旬報)の主演男優賞だぞ!
杉野:主演男優と助演男優賞俳優(=松坂桃李)と僕が幼なじみの関係って、どんな3人?って思っちゃいました(笑)
――幼なじみや愛する人を“斬る”役に対して、どうアプローチしましたか?
松坂:当然ですけど、人を斬った経験はないですし、愛する人と別れるにしても、今だったらすぐに連絡できるけど、連絡手段がない。そうした、これもない、あれもないといった時代劇では、妄想が生きてくるんです。台本を読む段階では、台詞にあるヒントから妄想を膨らませて、現場では監督の演出や相手の役者さんが出すものをしっかりキャッチすることが大事になりますね。
杉野:今、松坂さんの話を聞いてて、想像を膨らませなきゃいけないんだなって、改めて思いました。
松坂:台本を読んでて全体は理解できなくても、このシーンは発想が膨らむなってところがあるはずで、そこに熱量をガッと注ぐと、後になってから、わからなかったところも見えてくることもあるからね。
杉野:なるほど。これは言い訳になっちゃうんですけど、今回は物理的に時間が足りなくて、焦っちゃったところがありました……。
松坂:杉野は平行してバスケの映画も撮ってからなあ。そういう時は、とにかく台詞を入れて、後は現場に助けてもらうしかない! そこで得た感情は、また現場に戻ってきた時に、役を維持する力になると思う。僕は「時間ないっす」ってマネージャーさんに言うけどね(笑)。でも、杉野はめちゃくちゃいい感じで、いろんなジャンルの仕事をしてると思うよ。特撮出身の僕や菅田(将暉)にはない感覚を持ってる。
杉野:戦隊やライダーの現場を知らない僕がまだ気づいていないことを、2人は最初の現場で知れたんじゃないか、僕は学ぶべき基礎とか何か取りこぼしてきてるんじゃないかっていう不安があるんです。
松坂:どんな先輩だって、取りこぼしてるし、後から気づくこともたくさんある。僕も、この仕事を始めて感じた不安や怖さは、いまだに持ってるし、ひょっとしたら役所(広司)さんほどの方でも持ってるかもしれない。もし、杉野が同世代のトップを走りたいと思ってるなら、むしろ不安や恐怖は持ってないと。
杉野:つねに不安しかないです。不安と怖さについてなら、永遠に話せます。その怖さをどうやって打破したらいいか考えるんだけどわからなくて、「俺ってめんどくせー!」っていうのを毎日繰り返してます。
松坂:時間が解決する部分もあるんじゃないかなあ。作品の数が積み重なっていけば、どうしたらいいのか、頭じゃなくて肌で感じられるようになる気がする。
杉野:いろいろ聞いてもらえて、心がラクになりました!
●映画『居眠り磐音』
5/17(金)全国ロードショー
©︎2019映画「居眠り磐音」製作委員会
坂崎磐音(松坂桃李)は、幼なじみの小林琴平(柄本 佑)、河出慎之輔(杉野遥亮)とともに江戸で勤番を終え、久々に帰郷。故郷である豊後関前藩で起きた、ある哀しい事件により、祝言を間近に控えた許嫁の奈緒(芳根京子)を残して脱藩。すべてを失い、浪人の身となった──。江戸で長屋暮らしを始めた磐音は、長屋の大家・金兵衛(中村梅雀)の紹介もあり、昼間は鰻屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働き始める。春風のように穏やかで、誰に対しても礼節を重んじる優しい人柄に加え、剣も立つ磐音は次第に周囲から信頼され、金兵衛の娘・おこん(木村文乃)からも好意を持たれるように。そんな折、幕府が流通させた新貨幣をめぐる陰謀に巻き込まれ、磐音は江戸で出会った大切な人たちを守るため、哀しみを胸に悪に立ち向かう──。
●文/小泉咲子 撮影/藤本孝之 スタイリング/丸山 晃 ヘア&メイク/髙橋幸一(Nestation)[松坂分]、速水昭仁[杉野分]