2025.06.30
ウチの大学のスゴい人。〜僕がココにいる理由〜神奈川大学の高階智和くん、眞鍋和士くん、大野洋毅くん
今回紹介するウチの大学のスゴい人は、神奈川大学、工学研究科工学専攻機械工学領域修士2年の高階智和くん、工学部機械工学科3年の眞鍋和士くん、化学生命学部応用化学科2年の大野洋毅くん。彼らは、ハイブリッドロケットの飛行実験に成功! 最高飛行高度10.1㎞の日本記録を樹立した人たち。そんな彼らに、大学のことや将来のことを聞いてみた。
上/高階智和くん、中/眞鍋和士くん、下/大野洋毅くん
より高い宇宙に向かって一丸となって取り組む
── まず日本記録について教えて!
高階「2021年に僕たちが所属する神奈川大学宇宙ロケット部が、小型ハイブリッドロケットの到達高度日本新記録である10. 1kmを達成しました。コロナ禍ということでさまざまな困難がありましたが、たくさんの方のご支援をいただき達成することができました」
眞鍋「ハイブリッドロケットとは、固体燃料と液体酸化剤を組み合わせたロケットのことで、高性能にして安全性が高く、また環境負荷が低いことが特徴です。コストの面でも優れており、今後ますます注目されるロケットです」
大野「企業も含めて現在の日本で開発が盛んですが、現時点では神奈川大学の宇宙ロケット部 /航空宇宙構造研究室がリードしています」
── すごいね! ということは、部員はみんな ロケット工学のスペシャリストばかりなの?
大野「そんなことないですよ。僕は工学部ではないですし、宇宙ロケット部の存在も大学に入ってはじめて知りましたから。他の部員も経済学部や法学部とかまったくロケットと関係のない人もいたり。女子学生もけっこういますよ」
眞鍋「僕は将来宇宙ロケット業界に進もうとは思っていないです。どちらかというと、宇宙エレベーターのほうに興味があるんです。さらに起業を目指しているので、宇宙ロケット部は一つの経験として所属しているんです」
大野「宇宙って工学的なこと以外にも商業や法律など全然未開発なんです。だから、ひも解けばすべての分野に繋がるんです」
高階「どんな分野が役に立つか未知な部分がたくさんあるので、何となく興味があるからというだけで入部しても全然OKなんです」
── 昨年も打ち上げに成功しているよね?
高階「最高速度マッハ1.5で飛行した後、太平洋に軟着水した機体の回収に成功しました。ロケットにおいてもサステナブルであることが命題となっています。燃料も再生海洋プラスチックを着火剤に使用していますから」
── 打ち上げの瞬間ってどんな感じ?
高階「大きな花火が上がったときのように、お腹にズドンと衝撃を感じます」
大野「その瞬間は本当に感動します。部員と抱き合って涙が出るほど」
眞鍋「打ち上げが近づくにつれ早朝から深夜まで作業したりと、かなり大変。当日は夜10時集合で翌朝6時打ち上げですからね。でも、いざ打ち 上がったロケットを見るとすべての疲れが吹っ飛びます。それぐらい達成感があるんです」
高階「僕は最前線で打ち上げを管理しているのですが、ちゃんと打ち上がるかどうか心配で、感動どころじゃないです(笑)」
── ライバルはイーロン・マスク?
高階「いやいや、スペースXは技術的にも商業的にも雲の上の存在です。日本国内の宇宙関連人口よりも、スペースX一社のほうが人数が多いぐらいですから」
眞鍋「世界でもロケット打ち上げ能力を保有している国ってせいぜい10カ国ぐらいなんです。その中でも日本は大型ロケット打ち上げの実績が多くあります。日本がはじめて開発した技術もたくさんありますし、これから日本が世界をリードするチャンスは全然あると思います」
大野「それに向けていろいろと動きがはじまっていますからね」
── それこそ神奈川大学の宇宙ロケット部のような存在も、要因になってくるよね。
眞鍋「神奈川大学は総合大学なので、いろんな学部の人と関われるのがいいですよね。ロケット技術のことだけじゃなく、経済や法律の面からも多角的に見れますから」
高階「宇宙ロケット部は航空宇宙構造研究室と共同で活動しているのですが、それを率いているのが高野教授です。すごく厳しい教授ですが、やってみたいことがあれば絶対にダメって言わないんです。そうした環境は、まだ発展途上な分野を学ぶ上でとても魅力的です」
── 部員の人たちみんな仲が良さそうだね。
高階「ロケット打ち上げが成功したら、文字どおり打ち上げとかしますよ(笑)。日常でも月一で飲み会があります。高野教授がお酒好きなので、みんなの出席率もけっこういいんです」
大野「でもそのときはロケットの話はしないよね。それこそいろんな学部の人が集まってるから、他のおもしろい話が聞けますね」
── 女子学生もいるから楽しそうだね。女子の意見でロケットを花柄にしようって話になったりしたことないの?
眞鍋「花柄はないですけど、初代ロケットはヒョウ柄でした。もっとも海上に着水した際に発見しやすい視認性の高さが理由ですけど」
── なるほどね。なんか、みんな生き生きしてるね。楽しそう!
高階「ロケットを打ち上げるという明確な目標 に向かってみんなで取り組んでいるので、充実感や達成感は他では味わえないものがあります。 あと、就職活動でも有利。学生時代にロケットを打ち上げたことがあるって言うと、各企業の方が興味津々で話を聞いてくれるので(笑)」
大野「僕は日本記録を達成したときの部員ではありませんが、誇らしく思っています」
眞鍋「まだまだやってみたいことはたくさんあり、在学中にいろんな経験をしてみたいです」
◆神奈川大学◆
文系・理工系11学部を有する総合大学で、全国から約1万8千人の学生が集まる。学部横断型のPBL(問題解決型学修)に力を入れており、国際都市・横浜の地で、実課題の解決に向けた学びを深めている
神奈川大学宇宙ロケット部 Instagram
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●文/安岡将文 撮影/瀬田秀行