2025.09.30
ウチの大学のスゴい人。〜僕がココにいる理由〜横浜国立大学の森野琢水くん
今回紹介するウチの大学のスゴい人は、横浜国立大学、理工学府 博士課程後期 機械・材料・海洋系工学専攻 材料工学教育分野 廣澤研究室の森野琢水くん。森野くんは、最高峰の国際科学雑誌『Nature Communications』で論文を発表!2年かかる計算を、5分で解けるようにした人。そんな森野くんに、大学のことや将来のことを聞いてみた。
挫折をバネに結果を出し社会に貢献する研究者!
── 多元素の合金の微細構造を予測するために、黒板に書いてある数式を新たに生み出したって、すごいね! ……ごめん、凡人には何のことだかさっぱりわからないです(笑)
「たくさんの元素が含まれた合金、つまりいろんな金属が集まってできている金属が、どんな中身になっているのかを予測する新しい手法です。これまでの手法では2年以上の時間を要していましたが、僕が開発した方程式を使えば5分で解けるようになったんです」
── ほー! 世紀の大発見じゃない!!
「ありがとうございます(笑)。科学雑誌の『ネイチャーコミュニケーションズ』にも掲載され、国際的な評価をいただいたんですよ」
── 素人でも思うけど、あの雑誌に掲載されるって、とっても名誉なことだよね?
「『ネイチャーコミュニケーションズ』には世界中の研究者から論文が提出され、その中から掲載される論文が選ばれるのですが、その掲載採用率は7%程度と言われています」
── それだけ画期的な手法ってことだよね。特許を取得したら大金持ちになれるじゃん!
「それが、今回の手法については特許を取らないことにしたんです。広く使ってもらい、業界の発展に貢献できたらと思いまして」
── ススス、素晴らしいお考え! ところで、なぜその手法を研究しようと思ったの?
「結果を得るのに2年間もかかる状況を変えられたら、おもしろそうだなと。もともと、計算が大好きだったので、まずは論理的に考えて試行錯誤を重ねながら完成させました」
── ほー! なぜ横浜国立大学を選んだの?
「ぶっちゃけ東京大学が第一志望だったのですが、受かりませんでした。落ち込みましたが、横浜国立大学には希望する理工学部生が1年生の段階から最先端の研究に参加できる、ROUTEというプロジェクトがあることを知りました。それが決め手でしたね」
── とにかく新しい何かを発見したい、そのための研究に早く取り掛かりたいという人には、打ってつけの大学ってわけだ!
「そうですね。論文を書くごとに奨学金がいただけるなど、研究に関してのバックアップ体制が充実しています。また、総合大学なので、まったく異なる分野の学生と交流できるのも魅力です。視野も広がりますから!」
── 学ぶ意欲がある人には理想的な環境だね。
「今回の研究に関しても、必要な知識と経験を最初から持っていたわけじゃないので、いろんなことをたくさん勉強しました。たとえば、プログラミングも一から勉強しましたし、英語も独学で身につけました。新しいことを知るのって、楽しいですよね!」
── サスガだね! 今後はどうするの?
「来年の春に、カリフォルニア工科大学への留学が決まっています。その後、ドイツの大学にも行ってみたいと思っています。最終的には、国立の研究所に入れたらなと。ただ、大学教授への興味もありますし、いっそ起業してみたらという声もいただいています」
── 可能性は無限大だね!
「「やってみたいことがたくさんあるんです。自分が研究し発見したことで、世の中に貢献できたらいいなと思っています」
── いいね! でも研究室にこもってばかりだと、カラダに悪くない?
「大丈夫です。キックボクシングで体力作りとストレス発散をしているので!」
── まさかの格闘技! 好きなの?
「まったく興味ありませんでした(笑)。でも自分の殻があるからこそ破るのが大好きで。興味がないからこそやってみたくなる。思わぬ一歩が、新しい世界の扉を開くんです」
◆横浜国立大学◆
1949年に開学し5学部6大学院を擁する総合大学。理工系、人文系、社会系などの学部がそろい、分野を横断して学べる。研究や学生支援が豊富
●文/安岡将文 撮影/瀬田秀行