2020.10.22
コロナで早期退職を決断。社会人2年目が実感した厳しい現実。
いまだ世間に大きな影響をあたえている、新型コロナウイルス。緊急事態宣言が発令された当初に比べ、新しいライフスタイルが定着しつつあり、さまざまな活動が活発になっているが、経営悪化により事業縮小や人員削減を余儀なくされている企業も少なくない。そんな中、会社や仕事にも慣れてきて、これからという時期に早期退職をする若者が増えているのをご存知だろうか。働き盛りであるはずの若者たちが、なぜこのような状況に陥ってしまったのか。今回は、実際に早期退職を決断した2年目の社会人に、取材を敢行し、その現実に迫った。
大手不動産会社に勤めていた
社会人2年目のO・Mさん
事業縮小に伴い早期退職を決断
「新型コロナウイルスの影響により会社の経営が悪化し、各地の事業所が閉鎖する形に。事業縮小に伴い早期退職という名目で人員削減が行われました。結局何人が退職したかはわかりませんが、話を聞いていた段階では400〜500人規模のものになると。もともと転職を少し考えていたこともあって、これを機会に前向きな方向で早期退職を決断しました」
「2日後から休みだから」突然の長期休暇を宣告される
「早期退職の話が出る前に、じつはそもそも自粛期間に数ヶ月にわたる休暇があったんです。その理由はコロナの影響で営業に回れなくなったからです。感染拡大を防ぐためにも、各地でさまざまな人と関わる営業ができなくなり、その分の人材が不必要になったからだと思います。とくに社会人2年目、3年目の人は人数が多く、経験も浅いので休暇を急に“君達は2日後から休みです”と言われ、なすがままに数ヶ月の休暇となりました。その期間は本当に仕事はなくて、まるで大学の長期休業のようでした。最初は驚いたし、不安もありましたが、給料をいただいていたのが救いでした。全額とは言わないまでも、生活できるレベルでお金はあったので助かりました」
いざ復帰した5日後には早期退職を募る話が
「長期休暇のあと、業務に復帰したその5日後くらいに、早期退職者を集めることが公表されました。対象は全社員で希望者を募る形でしたが、なんとなく、休んでいた私たち2.3年目の人たちに対して言っているのだなと感じましたね。私たちが休んでいる間も、上司たちは働いていたし、いなくても仕事ができてしまう。この事実が私たちに突きつけられた現実でした」
希望制といえど、辞めざるを得ない状況に
「同期のなかにははっきりと辞めてほしいと言われた人もいるみたいです。私の場合は上司と相談して、このタイミングで退職する、しないことのメリットとデメリットを教えていただきました。ですが、最後には会社的にできれば辞めてほしいという方針であると伝えられ、会社に残りたいと言っても残ることはできないかもしれないと言われました。そこで後悔のない選択をしてくださいと言われたのですが、会社的には辞めてほしいのが本音。そんなこと言われたら退職する以外の選択肢がないなと感じてしまいました」
休暇を利用しキャリアビジョンを見つめ直す
「最初の1ヶ月ほどは本当に何もせず、恥ずかしながら自堕落な生活を送っていました(笑)。このままではダメだと思い、副業はOKと言われていたので、副業をはじめました。そのほかは趣味と自分のキャリアビジョンを見直す時間として使いました。もともと少し転職を考えていたこともあり、このままこの会社に残るのか新しいところに飛び込んでキャリア形成した方がいいのかを考えていました。この時点では、早期退職の話はなかったし、転職も会社に勤めながらするのは難しいなと感じていたので、退職することはまだ考えていませんでした」
悩んだ結果、早期退職を選択し転職活動へ
「早期退職の決め手は、退職金が出るというのと営業としてのチャンスが減ったことです。この年齢で退職する場合、基本的には退職金はないのですが、今回は特別にあったので。また、営業としてキャリアを積みたいと思っていたのですが、事業縮小をした今の状況では女性の私ではチャンスが少ないと言われました。若いうちにバリバリ働きたいと思っていたので、自分のキャリアビジョンとマッチしない点も増え、早期退職を決めました」
会社に不満はない?
「とくに不満はありませんでした。このような状況になる前も、なった今もほとんどないです。営業の仕事はシビアな世界ではありますが、福利厚生は整っているし、上司や同期も仲がよく雰囲気はよかったと思います。強いていうならば、人員の割り振りがおかしいなと思うことは多々ありました。営業は男性がメイン、社内業務は女性が担当することが多いんです。しかも男性の営業は結果を出せないと厳しく言われたりしていて辞める人も多く、結果として女性の方が多いイメージがあります。福利厚生が整っていて女性は働きやすい環境ということもあると思いますが、営業はが足りていないのに、社内には女性社員がたくさんいるみたいな状況もありました。2年目の私から見ても、1人でできるようなことを2人でやっていることもあり、疑問に思っていた部分もあります。ですので、事業縮小に伴う人員削減は仕方ないなと思います」
転職活動もやはりコロナの影響を受けているのか?
「正直、大きな影響はあまり感じていないです。というのも、私は転職の経験がなく、今回が初めての転職。なので、コロナ禍と通常時の差が分からないので、逆にこれが普通と思っています。やりたい仕事が見つかったとしても、その会社や業界がコロナの影響を受けているところだったら転職もしにくいとアドバイザーから言われてはいますが、極端に採用が少ないわけではないし、定期的に募集要項とかも届いているので、そこまで影響はないと思います」
コロナ禍での転職活動に不安は?
「ないといえば嘘になりますが、強いていうならば、自分自身にスキルがないこと。まだ2年目でこれからっていうときの退職なので。アドバイザーに、経営不振のときに最初に切るのは人材。だからそれなりのスキルがないと厳しいかもしれない。と言われたのは不安でした。ですが2年目の私は第二新卒として採用されるので、まだ希望は十分にあるのかなと思っています。今は第二新卒のニーズが高まっているという話もありますし、実際に内定をもらっている人もまわりにたくさんいます。不安がないわけではありませんが、ネガティブに考えすぎてもアレなので、ポジティブに、募集している会社でいいところが見つかればいいなって思っています」