2018.07.28
古着シューズ、知りたい基礎知識ビンテージ、ミリタリー多数。古着スニーカーは奥深くて楽しい!
靴好きならぜひ足を踏み入れてほしいのが古着スニーカーの世界。知れば知るほどに魅了されていくこの靴のカテゴリー、興味があるけれど足踏みしてしまっている人も多いんじゃないだろうか。そんな人に送るのがこのシューズ企画。ビンテージシューズショップ”SOMA”の徳永氏を指南役に招き、ビンテージ、ミリタリーからレア靴まで! 古着スニーカーのおもしろさを存分に語ってもらった。
■今回指南してくれたのはビンテージシューズ事情に詳しいこの人!
SOMA 下北沢 徳永勝文さん
□Profile
若き頃からスニーカーの魅力に目覚め、カナダ在住を経て帰国後にビンテージスニーカー 専門店「ソマ下北沢」をオープン。靴に関しての豊富な知識と愛情で、シューズ業界でも一目置かれている存在。
「古着のスニーカーの王道といえるのは、やはり有名スポーツブランドのビンテージ品ですね。時代ごとに仕様が違ったりしているので、知る驚きや楽しみ、所有する喜びが尽きない靴のカテゴリーです。軍で使われているトレーニングシューズ、いわゆるミリタリーシューズも人気があります。これはデッドストックの状態、好条件で発見されることが多く、サイズの問題だけクリアできれば、比較的手頃な価格で楽しめる靴です。そして、古着やデッドストックならではの一点もの感覚を最大限に味わうことができるのが、レアな珍品たち。これらは大人が次に狙っていく1足として、ほかの靴にはない魅力にあふれていると思います」
■ビンテージのシューズは現行の靴と何が違う? ひと言では語れないその奥深さ!
古着スニーカーの王道ジャンルといえるのが、ビンテージ。’70~’80年 代を中心とした古い時代のスニーカーは、現行の靴とは異なるディテールが見られてとても興味深い。 ここでは各ブランドの名作の歴史をおさらいし、ブランドごとにどのシューズモデルをどんな風に楽しんでいったらいいのか、徳永さんに教えてもらった。
たとえばコンバース(CONVERSE)なら!
ステッチのありなしで年代がわかる!
「コンバースのオールスターには’80年代中頃までサイドステッチがあしらわれていました。これは靴の内側に施されていた当て布を縫い付けるためのものです。’80年代の後期には当て布がなくなったので、ステッチも消えてしまいました」
年代によってインソールもデザインに変化が!
インソール以外にもヒールパッチが違うんです
「ヒールパッチの色でも靴の年代が区別できます。デザインでいうと’60年代の終わり頃までは中央に配置されるのが三ツ星で、’70年代になると一ツ星になっていきます。黒いヒールパッチは’70年代製なので目印としてわかりやすいです」
柄ものの靴を探すのもひとつの楽しみ!
上/ヒールパッチに〝MADE IN U.S.A.〞の印字があって、タンのスターズ&アッパーのストライプスで星条旗を表現している’90年代製のシューズ。USA製は今では貴重だ。古着のシューズ1万5900円(バド)
右/アメリカンカルチャーのさまざまなアイコンも登場している。アッパーだけでなくタンのラベルやヒールパッチ、内装までバットマンずくめの1足。古着のシューズ1万5900円(バド)
左/もともとグレイトフルデッドのアルバムジャケットに使用されたアートワークだったデッドベア。この靴が音楽との相性のよさを示す一例だ。古着のシューズ6900円(ハリーアップ)
「やはり、色と柄を楽しむのもオー ルスターの醍醐味。’70年代製で柄ものは見たことがなくて、迷彩柄などが登場したのは’80年代になってから。’90年代に発売された星条旗柄のシューズはウチのお客さんでも探している人が多くて人気です」
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まだまだ続く! ビンテージは奥深い!
たとえばヴァンズ(VANS)はメイド•イン•USAなら間違いないです!
右/ラスタカラーの切り替えが映える「エラ」。’80年代製のユーズド。古着のシューズ2万79 00円(スプラウト セカンド)
中 /ヴァンズは民族調のパターンも大得意。’80年代製のユーズド。古着のシューズ1万9800円(スプラウト セカンド)
左/アフリカンバティックを思わせる柄は、ヌケ感を宿した夏スタイルにフィット。’90年代製のデッドストックで状態も良好。古着のシューズ1万5900円(スプラウト セカンド)
「現在ではUSA製が希少になってきているので、靴のインソールやヒールパッチを見て確認するのがいいでしょう。インソールに白いパッチが付いているものは、’80年代頃までです。柄ものでいうと、ソールのサイド部分にまでプリントが入ったものもあったりして楽しめます」
たとえばナイキ(NIKE)なら!
「ナイキといえば、’70年代に誕生したブレイザーに代表されるバッシュ系シューズが人気。また、’70年代のランニング系を探している人も多いです。タンに筆記体のロゴやオレンジスウッシュが入った’70年代ものが人気です」
ここまで紹介した靴たちはほんの氷山の一角。そして次は指南役のSOMA徳永氏がもっとも好きだというブランド、アディダス(ADIDAS)について教えてもらった。めったにお目にかかれない激レアシューズが次から次に登場! 見逃せない靴ばかり!
「アディダスは、古い時代からグローバルな人気を誇っていたんだシューズブランドなんだなと思います。ヨーロッパはもちろん、南米でもアジアでも中近東でもビンテージが見つかりますからね。たとえばスタンスミスはフランス製がメインですけど、アメリカ、モロッコ、スペイン、台湾でも靴が生産されていました。ただ、革の質も含めてフランス製の雰囲気が一番いい。また、フランス製は色が白×緑のみの展開になりますが、USA製になると黒や赤といったカラーのシューズもリリースされています。フランス製のアディダスは細身のシルエットなので、日本人がジャストサイズで履くと甲の幅が広がって見えてしまいがち。大きめサイズの靴を選んでシューレースをキュッと締めて履くのがカッコイイです」
みんなが知っている靴、スタンスミスの歴史をさかのぼると?
「スタンスミス」の源流は、1965年に発売された「ハイレット」という靴。’ 70年代にはタンに〝HAILLET〞、アッパーのサイドに〝STAN SMITH〞と入ったものもあった。こちらの「ハイレット」は、もちろんフランス製。革質のよさや作りの確かさで人気だが、もうひとつ大きなアドバンテージがある。ほっそりした木型が使われていて見た目がスタイリッシュな靴だ。古着のシューズ3万9800円(ソマ下北沢)
ビンテージスニーカーならではのディテールが!
シューズのタンに記された〝HAILLET〞は、後に完全に〝STAN SMITH〞へと切り替わる。イラストの顔も こちらのものより若い見た目になっていくのだ。
こちらの靴は、ヒール部に配されているのが起毛感のあるベロア素材。「スタンスミス」のディテール史は、なかなか奥が深いのだ。
写真の靴は ’74~’77年頃までしか生産されなかったサイドにスタンスミスのロゴが入る「HAILLET SMITH」という貴重なシューズ。
ヒールにも変遷があっておもしろい!
「’70年代中頃に生産されたと思われるモデルになってくると、靴のヒールにあしらわれる素材がスムースレザーに変わります。時代に合わせてディテールが少しずつ変更されている。ビンテージスニーカーはこういうちょっとした違いも魅力ですね」
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お店の中にはこんな激レアモデルが!
代表的シューズ、スーパースターもビンテージならこなれ感たっぷり!
フランス製の「スーパースター」で、’70~ ’80年代にかけてあしらわれていた〝金ベロ〞がアイコンとなっている。アディダスのビンテージスニーカーを代表する、ファン垂涎のモデル。古着のシューズ3万9800円 (ソマ下北沢)
「スーパースター」を象徴するシェルトウ。同じ’70年代製の靴であっても、より古いものはこちらよりも表面がゴツゴツとしている。
こんなスーパースター見たことない!
「スーパースターには"ハーフシェル"と呼ばれるタイプもあります。靴のトウにあしらわれるシェルの面積が狭いというレアバージョンです。古いタイプなのでヒールにあしらわれているのはベロア。デッドストックで、しかもパープルカラーというのも珍しい!」
まだまだレアなビンテージシューズがたくさんある!
1983年に登場した靴、「キャンパス」。これまで何度も復刻されており、ファンにはおなじみ。こちらは’80年代フランス製のオリジナル。古着のシューズ3万9800円(ソマ下北沢)
2本のベルクロが特徴的なシューズ、「ファスト」。’70年代製でフランスメイド。ソールはスタンスミスと同様のものを使用。サイドのラインはパンチングで表現。古着のシューズ3万9800円(ソマ下北沢)
’70年代生まれの「カントリー」も名作として語り継がれてきたシューズ。’80年代のフランスメイドは、このモデルならではのスマートさが際立っていて美しい。古着のシューズ2万 5900円(ソマ下北沢)
’70年代にフランスで生産された「ロッドレーバー」。アッパーにナイロンメッシュを使用したシューズだ。ヒールにベロアを配しているところは、ほかのモデルと同様。古着のシューズ1万 9800円(ソマ下北沢)
ここで紹介した内容はビンテージスニーカーの入り口にすぎない! 気になったらぜひ足を踏み入れてほしい。さて、話は続き、次は古着好きを魅了するミリタリースニーカーの話。
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国ごとに歴史がある!
■各国でディテールが違うミリタリースニーカー
各国の軍隊でトレーニング用に使われていたシューズは、無駄な装飾を削ぎ落とした究極のミニマリズムが魅力の靴。 コンバースが生産していたり、スペルガにそっくりな見た目だったりと、スニーカー好きを引き込む要素もたくさんあるシューズカテゴリーと言える。昨今のトレンドであるリラクシングムードあふれるスタイルにもぴったりの1足を、好条件なデッドストックで国別に紹介!
あのブランドも生産していた米国ミリタリースニーカーはこれ!
□Country:United States of America
□Data:陸軍
古着のシューズ1万6200円(バンク)
コンバースが誇る不朽の名作「オールスター」に似たルックスから「アーミーコンバース」と称されるミリタリートレーナーは、コンバースのほかにもマイナーインダストリーズ社とPFインダストリーズ社が生産していたとされる。こちらのアイテムはマイナーインダストリーズ社製。シンプルなデザインの故、着こなしを選ばない靴なのもポイント。
イギリスから生まれたミリタリースニーカーはこちら
□Country:United Kingdom
□Data:陸軍
古着のシューズ1万2500円(フィフス ジェネラルストア)
1974年にロンドンから北東90キロのシューベリネスという町で創業した「ハイテック( HI-TEC)」は、英国軍にミリタリートレーナーを供給。「シルバーシャドー」という品名で市販もされていたが、そのデッドストックがこちら。
あの大統領も愛したドイツのミリタリースニーカー
□Country:Germany
□Data:陸軍
古着のシューズ1万円(フィフス ジェネラルストア)
北欧・スウェーデンのスポーツブランドである「トレトン( TRETORN)」がドイツ軍に納入していたキャンバスシューズ。いわゆるジャーマントレーナー型とは違って、’60年代にケネディ大統領にも愛用されたブランドらしいプレッピーな佇まいの靴だ。
スペルガに見えるイタリア空軍のミリタリー
□Country:Italy
□Data:空軍
古着のシューズ8148円(ブラン)
イタリア軍のものは「スペルガ(SPERGA)」の名品シューズ「2750」に激似。スペルガと同じくピレリ社の傘下にあるメーカーが生産していた靴と思われる。インソールに〝AERONAUTICA MILITARE〞と印字されているように、こちらは空軍用。1997年製のデッドストック。
カナダなら深みのあるミリタリーがいい!
□Country:Canada
□Data:陸軍
古着のシューズ5900円(スラット)
カナダ軍のトレーニングシューズとして’80~’90年代に製造されていた、通称「カナディアントレーナー」。レトロランニング調のフォルムにナイロンメッシュとスエードを投下した超軽量な作りで、オリーブの濃淡配色にミリタリーな雰囲気が充満しているシューズだ。モダンなシルエットでカジュアルな着こなしのポイントにうってつけ。。ユーズド特有の特別感があるのに価格もお手頃の靴だ!
スウェーデンからは30年以上前のレアなミリタリーシューズを!
□Country:Sweden
□Data:海軍
古着のシューズ1万 2777円 (フィフス ジェネラルストア)
’70年代に軍で使用されていたレアな靴。スウェーデン軍のシンボルであるスリークラウン(3つの王冠)がネイビーカラーのコットンキャンバス素材に。トウやアッパー下部のラバーコーティング、防水仕様のソールから海軍用と推測。
「ドイツのジャーマントレーナーであれば、プーマやアディダス。アメリカのアーミーコンバースであれば、コンバース。自分たちにとって身近な靴のブランドが軍のためにトレーニングシューズを生産していたという歴史は、スニーカー好きなら押さえておきたいところです」
各国によってずいぶんとデザインやイメージが変わるミリタリースニーカー。気になった国があれば、陸軍、海軍とさらに調べてみるのもまた一興。まわりと差がつくこだわりが詰まった靴をぜひ見つけ出してみて! 古着ならではアジでスタイリングの完成度も上がるはずだ。
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最後はレアな靴をご紹介
■ディグする楽しみは一番!? 誰ともカブらない珍品の靴がそこにある!
古着のウエアを探すのと同様に、古着のスニーカーも埋もれた品々を掘り出すのが楽しくてやめられなくなる。その中でも、見つけたときに思わず目が点になってしまうようなレアなシューズは一期一会の極みといっていい。街を歩いていても人とカブることのない、いわば自分だけのスニーカーとして珍品靴を愛するのが大人の余裕だ。
右上
□Country:United States of America
スターターといえば、アメ リカ4大スポーツのプロチ ームに供給していたナイロン製スタジャンが有名。スニーカーの存在は、あまり知られていない。
古着のシューズ5900円(キンセラ)
左上
□Country:Unknown
伝説的なテニス選手、ジミー・コナーズのサインがヒールに。でも彼のシグネチャーモデルといえばコンバース製のはず。謎の靴だ。
古着のシューズ7900円(ハリーアップ)
中央
□Country:Russia
ロシア軍で使われていたというミリタリートレーナー。アッパーがスエード調の布素材だったりして超軽量なシューズ。ブートレグ感が逆に魅力の靴だ。
古着のシューズ1万円(フィ フス ジェネラルストア)
右下
□Country:United States of America
コンフォート靴っぽいルックスで、〝SAS〞のロゴ入り。あまり知られていないが、現存するアメリカの靴メーカーでUSA製 を堅持する銘柄。
古着のシューズ6800円(パレット)
左下
□Country:United Kingdom
表革×ヌバックで、サイドのロゴはエースペーサーと読めるが……。タンにはロゴと同じく金文字で〝MADE IN ENGLAND〞のプリントが入った靴。
古着のシューズ1万9800円(ソマ下北沢)
英国製の靴は比較的作りがいいですね
「劣化が気になるビンテージシューズでも英国製の靴だと、さすがにクオリティがしっかりとしています。レアものの靴を購入する際にも生産国をチェックしてみるといいでしょう。知らないシューズブランドでも、比較的作りがいいということで安心できます」
トレーニング用らしいですがこの靴の詳細はわかりません(笑)
「左下で紹介した一足は、状態のよい箱付きのデッドストックになります。箱にはトレーニングシューズと記載されていますが、残念ながら詳しいことは不明です。〝ACE-PACER〞というブランドも謎。ただし、イングランド製の靴なので作りは確かなもの!」
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ユーズドスニーカーを楽しむためには?
「今回のビンテージシューズのカテゴリーで見てきたように、’80年代後期になるとオールスターの内部に施されていた補強のための当て布がなくなってサイドステッチも消滅するなど、時が経つにつれてコストダウンのあおりを受けてスニーカーの作りは簡略化されていきます。この流れはコンバースだけでなく、ほかの靴のブランドでも同じ。アメリカのブランドが国内で靴の生産をやめてしまったのもコストを省くためです。そう考えると、やはり昔のスニーカーにはいいものが多かったという結論に至ります。現行の靴とビンテージのシューズを見比べてみると、いろいろと違いがわかっておもしろいですよ。古いものは、靴としての主張が強いと思います。ビンテージスニーカーが初めてという人は、今履いている定番モデルの古いものを探すところから始めてみてください。今、スニーカーブランドもビンテージを模して、あえて靴のソールを黄ばませた加工で復刻版をリリースしたりしていますよね。’90年代のビンテージシューズブームの頃はまだ若くて買えなかった人たちが、そういうモデルを楽しんでいるのでしょう。現在はブーム全盛時に比べると価格は落ち着いているので、本物を探してみてはいかがでしょうか」
この連載で紹介してきたことは、まだまだ古着スニーカーの魅力のほんの入り口に過ぎない。ビンテージはもちろん、ミリタリー、珍品などそのジャンルの幅広さ、そして、それぞれの奥深さにぜひ触れてみよう。きっとヤミツキになるはずだ!
今回いろいろ教えてくれた徳永さんのお店はこちら!
soma 下北沢
TEL:03-3481-0307
住所:東京都世田谷区北沢2-33-6 飯嶋ビル202
営業時間:15:00〜20:00
不定休
●キンセラ
TEL:03-6447-4544
●シント
TEL:03-6383-1808
●スプラウト セカンド
TEL:03-5474-4301
●スラット
TEL:03-3314-5670
●バド
TEL:03-3401-7246
●ハリーアップ
TEL:03-5378-8525
●パレット
TEL:03-6314-5666
●バンク
TEL:03-3795-0770
●フィフス ジェネラルストア
TEL:03-6303-0465
●ブラン
TEL:050-5309-1468
文/国領磨人(ノーテク) 撮影/田中利幸 スタイリング/深澤勇太
※価格はすべて税別です
※FINEBOYS 靴 VOL.8掲載商品のため、売り切れや取り扱い終了の場合がございます。ご了承ください。