2018.10.30
「10年後」も履きたい靴。 vol.7SOMA下北沢オーナー 徳永勝文さん
スニーカーのムーブメントが刻々と変化する中で、この先のシーンはどうなっていくのだろうか。新作のリリースラッシュが絶え間なく続く今だからこそ、一つのタームとして10年後を想像してみたい。そんなシーンの未来像について、スニーカー界の重鎮たちが展望を各々に語ってくれた。珠玉の私物スニーカーも踏まえた内容は必見!
ビンテージスニーカーの
言わば伝達者として。
SOMA下北沢オーナー
徳永勝文さん
Profile/アディダスを中心としたビンテージスニーカーショップを運営。屈指のアディダスフリークで知られる。意外にも、スタンスミスには一度も足を通したことがないそう。オールホワイトのスニーカーを服装に合わせるのはなかなかハードルが高いのが理由だとか。
今回、履いているシューズはこちら!
’80年代のビンテージのスーパースター。比較的ソールの状態が良いもので、レア度は高い。現役としてまだまだ活躍するとのこと。
希少性が高まるビンテージ、
その行く末となる10 年後
「ビンテージスニーカーの数は減少しつつありますね。輸入制限や国外への流出などで希少なモデルは入手が困難になっています。特に’70年代から’90年代のジャックパーセルは東南アジアでは高値で売買できることから多くの外国人が買いあさっていますよ。10年後に国内で入手することはものすごく難しんじゃないですか。それにデニムは劣化することも味だけど、デッドストックが重要視されるスニーカーは、根本的な数が減っていくことが宿命ですから。それとナイキやアディダスなどの現行品がビンテージになることはないと僕は思っていて、当時は手作業の工程があるから経年変化というプロセスがあるけど、今は大量生産の時代だし、ソールもポリウレタン製が多いから残らないですよね。あと、僕がスニーカーラバーになったきっかけとして、とりわけ、’80年代の映画からの影響が強くて。『グーニーズ』の中でショーン・アスティンなどが履いていたナイキとか、『スタンドバイミー』のコンバースを見てビンテージスニーカーに傾倒していったのだけど、現行品にはそういった背景が乏しいこともあり、残していきたいとは思えないんですね。10年後にも残したいスニーカーとなると……。やっぱりアディダスのスーパースターかな。本当に奥が深いし、スーパースターの代名詞であるシェルトウが付いてない時代があるぐらい同じデザインでも作りの差があったりしますからね。それとプーマのクライドなんかも数が減っていくスニーカーで、今回紹介しているモデルは、現在では使用が禁止されている塗料を使っていて、’70年代の独特な発色を残す貴重な1足なんです。限定でレアな現行品のスニーカーを追いかけることがムーブメントになっている時代だけど、僕はビンテージスニーカーの価値観を10年後にも残していきたい。もはや使命感すらありますね(笑)」
山積みのアディダスの靴箱。プーマのロゴを捩ったステッカーやカープファンである徳永さんの似顔絵ステッカーも趣味で作ったり。男心をくすぐる様相が一杯の店内
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徳永さんが選んだ「10年後」も履きたい靴はこの3足!
1_PUMA
CLYDE 70’S
プーマのアイコニックなスニーカーであるクライド。ウォルト・フレイジャーのリクエストを叶えるためにプーマが開発した由来は有名なヒストリー。独特なイエローの発色は’70年代に使用されていた塗料によるもの。現行品にはない唯一無二な存在感を感じる。
ユーゴスラビア製でアッパーに刻まれるクライドの表記が筆記体となっている
2_adidas
SUPERSTAR 70’S
伝説的NBA選手、アブドゥル・ジャバーが愛したスーパースター。’70年代当時、オールレザーのバッシュは革新的であり瞬く間に各選手の足元をスーパースターへと塗り替えた。こちらは当時の金ベロを残す本革仕様でスニーカー史を語る上で欠かせない名品。
個体によりサイズ感が変わるビンテージ。当時の生産背景を今に残す希少性が魅力的
3_CONVERSE
JACK PURCELL 70’S
今後、国内での入手が困難になると同氏が語るビンテージのジャックパーセル。’70年代はグッドリッチ社からコンバース社製に変わり、ジャックパーセルの転換期となった時代。レトロな質感を醸し出すネイビーとインソールには”SANITIZED”(衛生的)と刻印。
かかとのジャックパーセルロゴが平面ではなく凹凸があり、’70年代のディテールを残す
※この記事の内容は2018年3月に発売した「FINEBOYS靴 Vol.10」の内容を再編集して掲載しています
今回スニーカーを熱く語ってくれた徳永さんのお店はこちら!
■soma 下北沢
住所:東京都世田谷区北沢2-33-6 飯嶋ビル202
TEL:03-3481-0307
営業時間:15:00〜20:00
不定休
文/阿部省吾 撮影/道中貴弘