2023.09.08
坂東龍汰の大好きなカメラと映画の話
髙森美由紀の小説『ジャパン・ディグニティ』を映画化した『バカ塗りの娘』が、9月1日(金)に公開された。堀田真由演じる主人公の美也子の兄を演じた坂東龍汰に、映画の見どころや今ハマっていることなどを語ってもらった。秋を先取りして味のあるニットコーデにも注目して!
■津軽塗がつなぐ父と娘、そして家族の物語
ーー映画『バカ塗りの娘』が公開中ですが、まずは本作に出演が決まったときの感想は?
「もともと鶴岡監督の作品がすごく好きだったで、素直にうれしかったです。現場に入るのも楽しみでした」
ーー作品についてはどんな印象でしたか?
「なんといっても印象的だったのは津軽塗りの工程の美しさです」
ーー映画の冒頭の津軽塗りのシーンから始まりますよね。
「はい。工房内の静けさの中に、繊細な手作業とそれによって響く音。その映像と音で最初から作品の世界観に引き込まれましたね」
ーー本作は、そんな津軽塗を代々続けている家族の物語ですね。
「共演させていただいたことのある方ばかりだったので、すごく安心感がありましたね。舞台になった青森県の弘前市はとても空気がきれいだったのも印象に残っています」
ーー作品を通して観る人にどんなことが伝わったらいいなと思いますか?
「代々続けてきた津軽塗りという伝統工芸によってバラバラになってしまった家族が、堀田真由さん演じる主人公・美也子の津軽塗りに取り組む姿勢によってそれぞれの気持ちを動かしていくんです。そして美也子自身も津軽塗りに向き合うことで進むべき道を見つけていく。何事もひたむきに続けることで自分もそうだし、人の心を動かすことできるんですよね。そしてそれはとても美しいってことを感じてもらえたら嬉しいですね」
■撮影枚数は30万枚以上! 一眼レフカメラに夢中
ーー坂東さんが日常の中でひたむきに取り組んでいることってありますか?
「ずっとカメラにハマっていて、写真をずっと撮り続けています」
ーーハマり始めたのはいつ頃ですか?
「14歳のときです。祖父の家でキヤノンの「EOS Kiss X5」というデジタル一眼レフカメラを偶然見つけて、それを譲ってもらったのがきっかけです」
ーーカメラのどんなところに惹かれたんですか?
「写真はそれ以前から好きで、コンパクトのデジタルカメラでよく撮っていたんです。でも、一眼レフカメラのファインダーをのぞくと、それまでとはまるで別世界でした」
ーーどんなところが違ったんですか?
「普段、映画とかで観ていたような背景のボケる感じですね。『自分でもこういう絵を表現することができるのか』って驚いたのと同時に一気にのめり込んでいきましたね。それから少しずつ買い集めていって、今ではSonyのα7Rやローライなど、全部で7台のカメラを持っています」
ーー普段はどんなものを撮っているんですか?
「一番多いのは空の写真です。1台しか持っていないときは、どこへ行くにもカメラを持っていて、目に映ったものに気持ちが揺さぶられればすぐに撮っていたんです。そうやって撮っていくと、自然に空の写真が多くなっていきましたね」
ーー空の魅力ってどんなところにありますか?
「空って、夕日とか星空とか、その時で全然違う表情を見せてくれるんですよ。そこが一番の魅力。今でも、ふとしたときに撮りたくなります」
ーー他にはどんなものを撮っていますか?
「今は、どちらかというと使うカメラやレンズによって全然違う写真が撮れるってことにおもしろさを感じているんです。だから、ここ最近は、いろいろなものを撮りながら試行錯誤の連続って感じです」
ーーそうやっていろいろ撮っていくと、写真の量は膨大なんじゃないですか?
「撮影した写真は、すべて保存用のハードディスクに入れています。正確に数えてはいませんが、全部で30万枚くらいあると思いますね」
■いつか俳優仲間を撮影してみたい!
ーーそもそも写真の魅力ってどんなところにあると思いますか?
「人によってそれぞれ考えはあると思うんですけど、一枚の写真が一本の映像を超えることってあると思うんです。そういうパワーに魅力を感じますね」
ーーそういう写真の力を感じる瞬間ってどんな時ですか?
「仕事柄、映画やドラマで使うようなキービジュアルをよく見るんですが、その一枚に作品の世界感を凝縮させないといけないし、なにより、興味を持ってもらわないといけないですよね。そういう写真って、やっぱりものすごい力強さを感じます」
ーーお仕事では主に“撮られる”方ですが、私生活で“撮る”ことで、双方にいい影響ってありますか?
「撮るってことにおいては、フォトグラファーさんから刺激をもらっています。仕上がりを見せてもらうと、やっぱり写真にはその前後にストーリーがあるんですよね。一回のシャッターを押すのにも理由や意味が必要なんだって、すごく勉強になりました。もちろん撮られる時も、そういう意識を持つようになってからは表現にもっと奥行きができたと思っています」
ーー今後、撮影してみたいものってありますか?
「自分の周りにいる俳優仲間ですね。やっぱり表現者って、底知れぬ魅力があると思っているんです。出演している舞台や映画などの作品を観ると普段接している時と違う顔や雰囲気を持っていてハッとさせられます。そんな彼らにカメラを向けた時にどんな表現をしてくれるか、すごく興味がありますね」
ーー逆に仲間だからこそ撮れる表情も絶対にありますよね!
「そうですね。そういう両面を表現できたら面白いですね。写真の創作活動は一生続けていくと思っているので、いつかそういう機会をいただけるのであれば、ぜひ撮影してみたいです。その時は、ふらっと遊びで撮るスナップとかではなくて、ちゃんとしたポートレート作品として残したいと思っています!」
PROFILE
ばんどう・りょうた。1997年5月24日生まれ。北海道出身。2017年に俳優としてデビュー。今年は映画『フタリノセカイ』で第32回日本映画批評家大賞の「新人男優賞(南俊子賞)」を受賞。現在公開中の映画『バカ塗りの娘』では、主人公・美也子の兄、ユウを演じている。
Instagram
@ryota_bando
公開中
映画『バカ塗りの娘』
津軽塗職人を目指す引っ込み思案の娘・美也子と寡黙な職人の父・清史郎。家族より仕事を優先し続けた清史郎に愛想を尽かして家を出た母、
家業を継がず美容師として自由に生きる兄…。津軽塗によってバラバラになってしまった家族が、美也子のある大きな挑戦によって再び向き合う姿を、
四季折々の風景や土地に根付く食材と料理、そこに生きる人々の魅力を織り交ぜ描く。つらい時、楽しい時を塗り重ねるように日々を生きる父娘が、
津軽塗を通して家族の絆を繋いでいく。
衣装クレジット/ミハラヤスヒロのニット4万4000円、Tシャツ2万8600円、パンツ5万2800円(すべてメゾン ミハラヤスヒロ)、ヨークのシューズ3万8500円(へムトPR)、その他スタイリスト私物
文/橋本裕一 撮影/榎本洋輔 スタイリング/Yasuka Lee ヘア&メイク/後藤 泰(OLTA)