2018.04.18
メンズファッション総集編フライトジャケットの歴史とは?ミリタリーファッション完全講座!
メンズのファッションシーンで、今ミリタリーがアツい。MA-1を筆頭に、みんな何かしらはミリタリーアイテムを持っている。じつは奥が深いカルチャーなんだけど、知ってしまえばオシャレ人としての厚みが出る。ブームは繰り返されるから一度覚えてしまえば一生の知識だし、わかっているからこそのコーディネートと着こなしが”カッコイイ”。ということで、どこよりもわかりやすく、そしてディープなミリタリー服入門講座をここで開講。①MA-1の全容についてから始まり、②フライトジャケットについて、③カモフラ柄の話、④USミリタリーの
①ミリタリー服入門に!MA-1の歴史と魅力
フライトジャケット進化の歴史が集約されるMA-1の全容!
秋冬のメンズファッションの定番にまで昇華したアメリカ軍開発のMA-1。誕生したのは1950年代初期と今から60年以上も前(軍での正式採用は1957年)。言い換えると日本は昭和30年代。第2次世界大戦後の高度経済成長期頃。社会で習う家電の三種の神器が宣伝されはじめた時代だ。そんな昔に誕生したアウターがなぜここまで人気なのか、その理由を早速ひも解いていこう。
MA-1とは“空軍”飛行士のために生まれたものだった!
MA-1をはじめ、モッズコートやN-1デッキジャケットなどファッションと結びつくものが多いミリタリーアウター。じつはこれ、陸海空軍のいずれかの兵士のために作られたもの。
その中でも、MA-1は空軍(通称USAF/ユナイテッド ステイツ エア フォース)のパイロット(通称アビエイター)のために設計されたものである。ちなみに空軍は第2次世界大戦後の1947年に発足と、陸海軍よりも編成が遅い。これはかつての戦争において空中戦を主軸としなかったためで、改組するまでは1941年に設置された陸軍航空隊(通称USAAF/ユナイテッド ステイツ アーミー エア フォース)や、海軍所属の航空隊がそれを担っていた。陸軍所属の航空隊はその後独立する空軍の前身となることも押さえておこう。なお、カッコ内の通称名は覚えておくと“通”だ。
次の3つはアメリカ陸軍(通称USA/ユナイテッ ステイツ アーミー)が出自
●M-51(モッズコート)
イギリスのモッズというカルチャーの若者たちが、彼らの正装であるスーツが汚れないようにはおりはじめ人気に。
●M-65
M-43などを改良し1965年頃誕生。ベトナム戦争などで野戦服として活躍。1980年にウッドランドカモも登場。
●タンカース
タンカースってじつは俗称。正式名称はジャケット・コンバット・ウインター。主に戦車乗員用の冬季用戦闘服として開発。
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アメリカ海軍(通称USN/ユナイテッド ステイツ ネイビー)が出自のアウター
●N-1デッキジャケット
艦艇乗員用に第2次世界大戦から朝鮮戦争で主に採用。当時の衿はアルパカモヘアなのも有名。
MA-1に至るまで。フライトジャケットの系譜
マイナス10~10℃で着るアウターの完成形がMA-1
この気温域をアメリカ軍では“インターミディエイトゾーン”と呼ぶ。MA-1に至るまでには、レザー、コットン、ナイロンの順に当時の最先端マテリアルを使ったフライトジャケット改良の歴史がある。命懸けの飛行士たちだからこそ、体温管理と動作性は重要であり、その集大成として今日、その歴史の最高傑作と呼ばれるMA-1につながる。
●B-6(1939年~)
MA-1が位置する気温域ではシープスキンの飛行服が最初となる。B-3と酷似しているのだが、B-6は防寒性と実用性を両立させるため、スープスキンの毛足が短い。また機内での運動性向上のため、ウエストには調整用ジップ、背中にはアクションプリーツが付く。
●B-10(1943年~)
革製飛行服の代替として1943年7月22日に制式採用。初の“布製”飛行服。第2次世界大戦中の急激な皮革不足に悩まされ、大量生産可能なコットンツイルを使用し開発された。ライニングにはアルパカモヘアウールパイルを採用。シープスキンに比べかさばらず、軽量で保温性も維持。
●B-15(1944年~)
B-10の後継として開発されたB-15。基本的なフォルムは同じながら、大型パッチポケットがスラッシュポケットへと変わる。また、B-15は約10年の間に幾度も変更が加えられたことでも知られている。B-15のA、B、C、Dのシリーズも系譜を読み解くには外せない。
●B-15A(1945年~)
大きな特徴として、三角の革製のオキシジェン・タブ(酸素マスクのコードをクリップで固定するためのタブ)が付いた。脇の下にはコードループも付く。これは、インターコム(機内での内部通信)などの通信用コードが引っかからないように、ここに通しておくためのものだ。
●B-15B(1949年~)
この気温域の飛行服として初のナイロン素材を採用。ただし、それまでのコットンツイルも同時に採用されたため、布製のものもあった。さらには、MA-1に引き継がれることとなるシガレット&ペンシルポケット(ユーティリティポケット)もあしらわれた。オキシジェン・タブは長方形に変更される。
●B-15Cモディファイド(1951年~)
B-15Cには他同様の衿が付く。写真のものは改修という意味のモディファイドタイプのため衿が異なる。'50年代後半は航空装備の見直しが行われ、B-15はA~Dのすべてに衿なしのモディファイドが存在。これらは一斉に改修。誤解しやすいのだがA~Dの順を追って改修されたわけではない。
●B-15D(1953年~)
MA-1の直前モデル、B-15D。B-15Cまでの制式色は“オリーブドラブ”。B-15C誕生の際、陸軍航空隊(USAAF)は独立した空軍となり、新規定色に“エアフォースブルー”を採用したが、視認性や太陽光の熱吸収が強いなどの諸問題から、B-15D以降から“セージグリーン”に変更された。その後、1955年にMA-1が誕生
なぜMA-1は生まれたのか?
MA-1の誕生を決定づけたジェット戦闘機の到来!
1947年頃、朝鮮戦争でロシアのミグ15戦闘機の高性能に慌てたアメリカ。ノースアメリカンF-86セイバー(上のイラスト左)を急ピッチで投入した。朝鮮戦争におけるこの2機種のドッグファイトは戦記に残る出来事となるのだが、その裏では飛行服のモディファイ(改良)も盛んであった。
さかのぼればノースカロライナ州でライト兄弟が飛ばした飛行機ライト・フライヤー(アメリカ陸軍がはじめて軍用機として購入したといわれる)。オープンコックピットであった古典機は、第2次世界大戦により日本の零戦にも見られる単葉、遮蔽式のコックピット式(上のイラスト右)となり、ドイツで開発実用化されたジェット機へとバトンを渡していくのだが、この過程でパイロットのヘルメットはハード式になり酸素マスクなども装着。
そのため飛行服B-15シリーズに付いていたムートンの衿が干渉してしまうため、衿をリブにしたMA-1が必然と誕生した。
“幻”と呼ばれる赤MA-1なるものがあった!
1950年代中期、莫大な国家予算を握っていた空軍がもっとも力を入れていた防空用要撃機。次期主力要撃機の座を射止めようと航空機メーカーであるノースロップ社は、開発したばかりの戦闘機F-89スコーピオンのプロモーションに注力した。そこでテストパイロットには特別仕様の赤いMA-1を着用させたのだ。
MA-1唯一の弱点、耐火性を補う新素材の誕生
約20年間、軍で採用されたMA-1だが、強靭な素材であるものの耐火性にはやや劣るというのが弱点だった。その間に耐火性ナイロン素材の開発が進み、新素材「ノーメックス」が登場。それによりMA-1の軍用ジャケットとしての歴史の幕が閉じ、軍用ジャケットの主流はCWU-45/P(通称MA-2)に移行していった。
新素材ノーメックスを採用したCWU-45/P
400℃で60秒、繊維の形状を保つ(すぐ炭化し火傷を防ぐ)ノーメックスは、直火でなければ1000℃まで許容範囲。これを採用した新たなジャケット(CWU-45/P)が軍用として主流になっていった。
シンプルじゃない! 緻密なMA-1のディテール
このディテールを見れば、何十回、何百回と試着試験を行ったのだろうと想像がつく。本物の飛行服MA-1はシンプルではないのだ。
1.2本針縫い
総2本針でボディとアームを結合。フラットな縫い合わせは着心地よくゴロツキがない。
2.脇の綿抜き
脇の下の内側も、ひじ部分と同様に運動性を上げるため中綿をカットして仕上げてある。
3.内ポケット
実用性を考慮して飛行服でも採用されていた内ポケット。B-15からスタートした。
4.ひじ部分の綿抜き
袖を裏返すと三日月型にひじの中綿がカットされている。これはひじを曲げやすくするため。
5.立体裁断の袖
狭いコックピットで自然と腕が前にいくよう、アームはじつは立体裁断となっている。
6.素材の使い分け
36本の繊維を1本のナイロン糸にして織った生地はとても頑丈。リブはしなやかなウール製。
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②フライトジャケットの種類と歴史
飛行服(フライトジャケット)はさまざまな種類がありわかりにくい。しかし基をたどればAとBの頭文字がつくモデルからスタートした。前に述べたMA-1の系譜の最初にあたるB-6も、さかのぼればさらにストーリーがあり、ここに通ずる。ここでは飛行服の元祖とそれらの進化、系譜をひも解いていく。
すべてのUSフライトジャケットの歴史は
A=夏季用、B=冬季用の2種類から始まった!
気温域の区分を示す用語は夏季用の「A」と冬季用の「B」の2種類ではじまった。その後、戦域が広がりを見せる中で“ライトゾーン(10~30℃)”、“インターミディエイトゾーン(-10~30℃)”、“ヘビーゾーン(-10~-30℃)”の3種類に大別された。B-6からMA-1に変遷していくインターミディエイト用の飛行服と同様に、ライトゾーンはA-1からL-2シリーズへ。冬用のコートとしておなじみのN-3Bも、B-2を基とするヘビーゾーンのジャケットへと歴史をたどることができる。
●A-1(1927年~)
1931年まで生産されたA-1はジッパーが実用化される前のデザインのため、フロントはボタン式。さらに衿のスタンドリブもこのモデルの特徴だ。ボディのレザーは当時、多くはシープスキン製であった。また、資料から探るとポケットの位置や形状においていくつかのバリエーションがあったことが読み取れる。
●A-2(1931年~)
軍にジャケットを納入していたカンパニーをコントラクターというが、A-2には16社のコントラクターが存在し、1944年までに約20万着が作られた。ラフウェア社、エアロレザー社、J.A.デュボウ社が有名。ディテールにはコントラクターごとの特徴があり、台衿の有無、革の色合いなどもそれぞれ異なりマニアの多き名作となる。
●L-2(1945年~)
陸軍航空隊(USAAF)はA-2が抱える高価、大量生産が難しいなどの諸問題を解決するためにさまざまな素材をテストしていた。そこへ、1939年にデュポン社が開発していたナイロンの採用により、1945年5月21日にL-2が完成された。この新たな素材と衿を取り外したディテールはその後の飛行服を大きく変える基本形となる。
●L-2A(1951年~)
朝鮮戦争の最中、1950年代初期にL-2の後継モデルとして採用。陸軍航空隊(USAAF)から空軍(USAF)に独立した時期である。そのシンボルカラーであるエアフォースブルーを採用したのが特徴だ。酸素マスクコードなどを装着するレザー製だったオキシジェンタブはこのモデルでナイロン製となった。
●L-2B(1955年~)
約20年間と長期にわたって採用された。インターミディエイトゾーンでいうところのMA-1的な傑作的存在だ。また、ライトゾーンでは初採用となるセージグリーンカラーにも注目。そのほか、サイズ表示がインチからS、M、L表記に改められた。初期のライナーは表地と同色であったが、中期以降はレスキューカラーであるオレンジ色を配す。
●CWU-36/P(1973年~)
アラミド繊維を用い、素材自体は燃え上がらず炭になり、耐火性にも優れる新たな難燃素材、ノーメックスを採用した新モデル。陸軍の誇り高きモデル、A-2以来となる衿の復活も同じく最大の特徴だ。其の1で紹介したMA-1の後継、CWU-45/Pと酷似しているが、こちらは中綿のない夏季用モデル。今日のトレンドとも合致している。
海軍の傑作飛行服は“G”!
A-2と同等の人気を誇るG-1ジャケット。どちらも軍のレザージャケットであり混同しがちなのだが、簡単に言えば出自が異なるのだ。A-2は“陸軍航空隊”(後の空軍)のものであり、G-1は“海軍航空隊”がプライドを持って開発したものだ。両軍の確執がG-1という派生を作り、長きにわたり採用され続けたという説もある。
●G-1の前身、AN-6522(1944年~)
“ARMY”と“NAVY”の共同開発で開始したため頭文字にはANを配す。共用目的であったが、結果ほぼ海軍が使用。
●G-1(1951年~)
1976年採用中止となるが海軍パイロットたちの強い要望により1984年に再び採用。A-2との大きな違いは衿である。
フライトジャケットの2雄、「空軍のMA-1」「海軍のWEP(G-8)」
鋭い読者は気付いたかもしれない。MA-1が空軍を象徴する飛行服ならば、同じ時期に海軍航空隊は何を着ていたのか? 正解はWEP(G-8とも呼ばれる)。MA-1同様インターミディエイトゾーンにおいて使用され、MA-1よりも短丈となるフォルムが特徴。この独自のフォルムを支持するファッションマニアもいる。
●WEP(1950年代後期~)
トラウザーズとセットで着るため短丈に。ライニングにはパンツを連結させるボタンが付く。1973年まで生産された。
●B-2(1931年~)
アビエイター(飛行士)を寒さから守るために開発された極寒地用がBシリーズ。それ以前は上下一体型であったためサイズが問題になることが多く、B-2の開発にあたっては、ジャケットとトラウザーズにセパレートされた。そして1931年12月15日に制式採用。フィット感を高めるウエストバックルがほかではないディテール。袖口にはジップも配備。
●B-3(1934年~)
シープシェアリングジャケットの傑作。豪華なシープスキン使いで防風、防寒性がアップ。其の1の“MA-1の系譜”で登場するB-6とは毛足の長さが異なる(B-3のほうは毛足が長い)。ウエストにはアジャスターベルトが付く。ちなみに1990年前後の日本におけるミリタリーブームでA-2、黒のMA-1とともに一世風靡。根強い人気モデルでもある。
●B-7(1941年~)
防寒性をさらに高めるためロング丈へと大きく変貌。極厚シープシェアリングはそのままにフードが装着。大きなポケットの上にはジップ式ポケットも付く。物資不足が到来し短命に終わった稀有なモデル。当時は凍結防止で革をコーティングしていないため白を主としたジャケットだった。
●B-9(1943年~)
深刻な物資不足が皮革にまで影響した。そこでコットンツイルを採用したB-9が登場する。防寒性を高めるため、当時は高級素材であったダウンをキルティングしたライニングを採用し、画期的な暖かさを確保した。胸には大きなハンドウォーマー、フードと首のストラップにはムートンが付き、袖口にはリブが内蔵され防風性もアップした。
●N-2(1945年~)
写真がないのだがN-2と同時期にN-3も採用された。N-2最大の特徴は短い着丈。狭い機内で運動性を高めるためにデザインされた画期的なシルエットだ。それに対し存在感のある大きなフードも忘れてはならない。ヘッドギアがハードタイプになり、それに対応するためだったかと推測。この気温域で初のユーティリティポケットも配置。
●N-2A(1951年~)
ナイロン素材を採用したN-2A。空軍(USAF)の誕生により、シンボルカラーであるエアフォースブルーを採用した。特徴的な大きなフードは真ん中にジップが付き、ヘルメットと干渉しない作りとなるスプリットデザインを確立。’90年代中期頃の日本ではこのフードのジップを開き、割れたフードが肩にのった着こなしが流行した。
●N-3A(1951年~)
ショート丈のN-2とは正反対の性質なるロング丈の飛行服。N-2Aと同様にN-3Aも空軍指定から―のエアフォースブルーをまとう。しっかりと腰が隠れ保温性は確保できるのだが、運動性はN-2Aより落ちるためコックピットなどの狭い場所には適していなかった。N-2と同様、ジップ&ボタンの前立てが採用され、防風性なども大いに考慮している。
●N-3B(1953年~)
デザイン性と実用性を両立させ、現代でもリアルクロージングとして通用するN-3Bは、アイコニックな飛行服の1つである。風雪を防ぐためのコヨーテファー、ロング丈のフォルム、その佇まい、セージグリーンとなったナイロンカラー、完成されたそれは今もなお人気を博す。軍への正規品とは別に民間用にも多く作られたモデルでもある。
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③カモフラ柄の種類と特徴
8つのメジャーなカモフラ柄を知って”ミリタリー通”に!
たくさんのレアなミリタリーアイテムを勉強した諸君。ミリタリーの奥深さを楽しめたのなら、あと一息、最後までコアな部分を学んでしまおう。ここではミリタリーファッションに欠かせない「カモフラ柄」について説明しよう。最後まで読めば、同世代では負けなしの知識が身に付くはずだ!
そもそもカモフラージュ柄は、第1次世界大戦中、フランス画家が描いた模様がその起源という説がある。第2次世界大戦の頃には各国が独自の迷彩を採用するまでに発展した。ここではファッションとも親和性の高いアメリカ軍の柄を紹介する!
●タイガーカモ/古着で高値が付きやすい
別名タイガーストライプ。ジャングル戦が印象的なベトナム戦争で、実用性、デザイン性のよさから支持を得た。じつはもともと南ベトナム政府軍が使用していたもの。そのよさからグリーンベレーが勝手に着たのが始まり。ちなみにこの柄の起源はインドシナ紛争でフランス軍がベトナムに残していったリザード・パターンかという説もある。
●ウッドランドカモ/欧州の森林地帯を想定したカラーリング
’80年代初頭にアメリカ軍で採用された。一説には欧州の森林地帯を想定して作られたそう。今では類似柄も含め各国に広まる。
●チョコチップカモ/砂漠地帯用の小石模様がまるでチョコチップ
その由来は小石の模様がお菓子のチョコチップに似ているから。対砂漠用だが、予想より小石が目立つため、制式採用は短かったそう。
●デジタルカモ/いわばカモ柄界の“ドット絵”
今や主流のPC処理で作られた柄。迷彩の前提である“風景に溶け込む”という発想は、“印象に残りにくい”ことを目的とするようになる。
●ツリーカモ/枯れ木や枯れ葉を表現
枯れ葉や枯れ木などの山を想定。軍の採用は長くなく、狩猟などハンティング用で人気を得ることとなり、ファッションでも定着した。
●ナイトカモ/夜戦時の赤外線暗視装置対策として生まれた!
スコープで発見されにくいこの柄。これを初期のデジタルカモともいう。当初は赤外線暗視装置から見えにくくする目的で開発された。
●デザートカモ/その名のとおり、砂漠仕様のカモ柄
別名、コーヒーステインともいう砂漠用の柄。これもアイコニックな迷彩であり、前述したチョコチップカモの改良版でもある。
●アーバンカモ/スタイリッシュなモノトーンが「アーバン」
市街地での迷彩効果を狙ったクールなモノトーン。白、黒、グレーの色使いは類を見ない。残念ながら実践ではあまり効果がなかったそう。
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④USミリタリーの覚えておきたいアイテム
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ミリタリーファッションはとにかく奥が深い。古着好きをうならせるのはもちろん、名だたるハイブランドの元ネタになっているのも事実。そんな魅了する力を持っているのは、無駄をそぎ落としたデザイン性にあるのかもしれない。前述したフライトジャケット以外にも、多彩な使用用途に合わせたキャッチーなデザインの数々はUSミリタリーならではの魅力と言える。その分高価なものも多いのだが、服好きならばチェックしておいて損はない!
デニムに深みを感じる’30年代モノのセーラー
この年代のデニムパンツとなれば高額になるが、それよりも買い求めやすい海軍のセーラーで経年変化を楽しむのもおもしろい。さらには織りが縦方向のデニムが主流だが、これは横方向。また、冬用のウールに対して春夏用となるデニム地は珍しい。“S.APPLE&Co”社製。袖口のボタンにはアジェントナンバー(作られた年代)の1924が刻まれている。 (サファリ1号店)
レイヤードするとカッコイイC-1ベスト
ファッション好きの間でじわじわと支持を高めるベスト。飛行士が緊急脱出した後、1ヶ月間命を守るためのサバイバルキッド(食料や信号用具など)を15個のポケットに詰め込めるよう設計。’40年代もの。欠損していることの多いピストルホルスターも健在! ジャンピンジャップフラッシュ)
独特のグリーンが絶妙なアレグレッサーシャツ!
この独特のグリーンは軍制式採用カラーのセージグリーンでもオリーブドラグでもない。このシャツは軍事演習、訓練時に仮想敵国側を演じる部隊(アレグレッサー)が着用するもの(通称アレグレッサーシャツ)である。軍制式カラーと似て非なるグリーンが絶妙なのだ。これは’60年〜’70年もの。(サファリ 1号店)
駐屯地で実際に売られていたキャッチーなスウェット
陸軍駐屯地の中にある売店、通称PX(ポストエクスチェンジ)で売られていた海軍のトレーナー。自分で着るか、もしくはお土産にされたであろう1枚。前Vガゼットから’50年代のものとわかる。フロッキープリントは珍しく、人気のあしらい。 (サファリ1号店)
異彩を放つチェッカーフラッグ柄のジャケット
軍需衣料品市場、類を見ない柄。通称マーシャラージャケット。停止位置が見えないパイロットを誘導するラインクルーが着用するもの。周りから認識されやすい色、柄を最大の目的として開発。今では自衛隊のそれも酷似したデザインに。最近はこの柄をモチーフにしたと思われるウエアもよく見かける。(サイダー)
大きなヒップポケット付きのミリタリーパンツ!
レプリカも多い通称モンキーパンツ。これは激レア’40年代もの。ヘリンボーン地、USマリンコープスのメタルボタン、ガスフラップなど垂涎なディテールが随所に。最大の特徴、カバンを付けたような特大ヒップポケットはほふく前進時に物が取り出しやすいように。前にはサイドポケットしかないのも納得。 (ハレル)
USMA(ユナイテッド ステイツ ミリタリー アカデミー)のかわいいスクール調ニット!
USMAとはユナイテッド ステイツ ミリタリー アカデミーの略。エリートを養成する陸軍士官学校のこと。さまざまなアイテムがUSMAから出ており、そのデザインはどれもスクール調の上品な顔つき。このニットジャケットは1943年のビンテージのもの。(オルゴー)
冬場に着たい山岳部隊用コートのライナーコート!
過去にもブームを巻き起こしてきたミリタリーファッションだが、ライナーをアウターとして着るスタイルは昨シーズンの特徴であった。そこでオススメなのが山岳部隊用コートのライナーだ。素材感むき出しの存在感あるデザインに惚れ惚れ。これは’50年代のもの。(マービンズ)
1910年代に米国にもあったピーコート!
英国発祥というピーコート。飛行服の印象が強いUSミリタリーだが、第1次世界大戦時の服装規定には下士官用コートとして採用。1910年代のモノを忠実に再現したこの1枚は、国章を表す星とアンカーで構成された10個の”13スターボタン”が特長。 (東洋エンタープライズ)
カーキのPコートことマッキーノコート!
ヒップレングスのジャケットとして第1次世界大戦時からある誇り高きコート。インパクトのある大きな衿がどことなくピーコートに似ているが、このフォルムはアメリカ陸軍にて第2次世界大戦まで採用されていたもの。終戦頃にはこの名は消え、ジープコートと呼ばれるようになる。今またモダンに見えてくる貴重なデザインだ。 (マービンズ)
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⑤リーズナブルで使いやすい!欧州ミリタリー優秀アイテム
USミリタリーモノに対し、ややマニアック感のある欧州ミリタリー。マニアは世界中にいるのだが、USモノに比べ、価格は良心的なものが多い。現実的に買うことを考えるなら欧州モノが狙いどころ。これは使える!というアイテムを集めてみた。
モダンに映るノーカラージャケット!
チェコ軍のM-85ジャケットのライナーであるこの1枚。すっきりとした首まわりに加え、パイピングがほどよいアクセントに。都会的なグレーの色味や、肉厚のボアフリースが今っぽい。脇の下には通気性を考慮したスリットが入る。袖口はリブ仕様となる。(オルゴー)
人気のロゴものスウェット!
ロゴモノアイテムは根強い人気。ブランドロゴではなくミリタリーアイテムで差をつけてみるのも賢い。これはフランス海軍(マリーン ナショナル)のもの。ベロアや2トーンカラーが珍しく、ともにトレンドにマッチ。ワードローブとして大活躍するはずだ。(トールフリー)
サイズ感も絶妙!真っ白アノラックパーカ
真っ白のスノーパーカは世界中の軍が採用した希有な存在。そんな中でこのスイス軍のスノーパーカはデザイン性が高く海外のファッション好きからも支持を得る。コンパクトなサイズ感でルーズに見えにくいからだ。これは1945年頃のレアな初期デザイン。(トールフリー)
ゆるいシルエットが今っぽいダッフルコート
ロイヤルネイビー(イギリス海軍)の’40年代のダッフルコート。シンプルなデザインが愛らしい。流行りのオーバーサイズのコートを街でよく見かけるから、この野暮ったくてゆるいフォルムのミリタリーコートで変化球を投じてみるのもおもしろい。(サファリ1号店)
伝統的な織りに上品さが漂うデッキセーター!
風合い豊かなノルウェー海軍用のデッキセーター。大人っぽいショールカラーはクルーネックのものに対し、あまり見かけない。長い裾リブも同様だ。英国羊毛公社の基準を満たしたウールを使用し、メイド イン イングランドとなる。(中田商店アメ横店)
色気のあるジャーマンフライトジャケット!
ドイツ軍の’70年代フライトジャケット。デザイン性の高さはジャーマン ミリタリーならでは。ハイブランドがこのモデルをサンプリングしたのはわりと有名。大きなリブの立ち衿や、黒レザーとレスキューオレンジのコントラストが印象的。(ラボラトリー/ベルベルジン®)
信頼と実績の英国ブランドのアウター!
世界最強ともいわれる英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)をはじめ、世界中の軍隊へ優れた製品を提供してきたアークティス社。その経験と知識を継承し2015年にスタートしたブランドレーベル、アークエアーのアウター。すべてこだわりのUK製。(グリニッジ ショールーム)
モードな佇まいのレインコート!
イタリア軍のレインコート。ケープを合わせたようなインパネスコートを彷彿とさせるデザインが秀逸だ。その他、存在感のあるダブルのボタンや、クールなブラックなど文句のないディテール。1960年以前のビンテージながら、このプライスは嬉しい限りである。(オルゴー)
最高峰デザインと言われるフレンチミリタリーコート!
ボーダーなどの優しいデザインをイメージするフレンチミリタリーだが、もちろん武骨なモノも存在する。これはモーターサイクル部隊が着用した’40年代のもの。肉厚で表情のいいキャンバス地。今では点数も少なく貴重なアーカイブとなることは間違いない。(トールフリー)
US陸軍B-3に負けない存在感のアービンジャケット!
ロイヤルエアフォース(英国空軍)が着用したこの飛行服。あまり知られていないというマニアックさがいい。初期は電熱線が付いており、お腹脇からタコ足のようにコードが出ていた。袖口にはジップが付き、脇の下にはパンチングされたような通気孔もある。このレプリカはすっきりとした後期のモデル。英国官有物を示す矢印形のマーク、ブロードアローも誇らしい。(中田商店アメ横店)
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⑥“ミルスペック”の見方を知って、ミリタリーをより深く知る
たくさんのレアなミリタリーアイテムを勉強した諸君。ミリタリーの奥深さを楽しめたのなら、あと一息、最後までコアな部分を学んでしまおう。戦闘機から食品まで軍が扱う全品目に、厳しい規格基準があるのをご存知だろうか? それを示す仕様書が「ミルスペック(ミリタリー・スペシフィケーション)」というもの。ミルスペックと連動する情報が、タグには書かれているのだ。
タグを実例に、ミルスペックの表記と意味を知ろう
1:”インターミディエイトゾーンで着用する飛行服”と記載。このアイテムの使用目的を表す。
2:“型式タイプ”を表す。この型式タイプが一般的な呼称。この場合はMA-1。
3:軍が実際に使用していたことを示す”ミルスペックナンバー”。この数字を調べれば生産の年代など、アイテムの詳細がわかるようになっている。
4:軍で管理されている”ストックナンバー”。下2桁の数字はS、M、Lのサイズを意味している。
5:このアイテムを作ったメーカーがどこだか分かるように管理する”オーダーナンバー”。
6:5で示したメーカーの名前(この場合は”ライオン ユニフォーム”)がひと目でわかるように記されている。
7:このMA-1の所有者、所有権を示す。この場合は“U.S.プロパティ”なので、合衆国所有ということになる。
【知っておくと差がつく】コントラクターの大手”アルファ インダストリーズ”の軍用と民間用アイテムの見分け方
軍に納入するメーカーをコントラクターと呼ぶ。正式名”アルファインダストリーズ”は1959年の工場開設以来、M-65やMA-1などのジャケットを総計4000万着以上生産。軍へ納入後、その都度余剰分を活用するため民間へタグのみを替えて放出。変わらない品質は評判で瞬く間に広がる。そのタグの見分け方は簡単。軍用の1本線か民間用の3本線か。これは知っておいて損はない。尚、タグはメーカー、アイテム、年代によって記載の仕方が少し異なる。
アイテムの成り立ちや歴史を理解すれば、そのアイテムの理解が深まり愛着も増す。これで同世代の一歩先を行くおしゃれを実現しよう!
オルゴー☎03-3463-0509
グリニッジ ショールーム☎03-5774-1662
サイダー☎03-5722-0156
サファリ1号店☎03-5378-9230
ジャンピンジャップフラッシュ☎03-5724-7170
東洋エンタープライズ☎03-3632-2321
トールフリー☎03-3715-9278
中田商店アメ横店☎03-3832-8577
ハレル☎03-5734-1946
マービンズ☎03-5466-2390
ラボラトリー/ベルベルジン®☎03-5414-3190
撮影/村本祥一(BY THE WAY) スタイリング/鴇田晋哉 イラスト/Green K 取材協力/亀屋康弘(バズリクソンズ)