2024.06.05
ウチの大学のスゴい人。〜僕がココにいる理由〜明治大学の加藤海凪さん
今回紹介するウチの大学のスゴい人は、明治大学の加藤海凪さん。洋服を通じて知的障がい者の生活の選択肢を広げることを目指すプロジェクト「SAFEID」主宰。知的障がい者にオシャレする楽しさを届ける加藤さんに将来のことや、大学のことなどを聞いてみた。
まだ学生だからこそ
素直な気持ちに忠実に
──加藤さんが取り組んでいることを教えて。
「障がいのある方も含めて、誰でも楽しめる服を作っています。 その上で一番重要なのは、 選肢を増やすこと。 私が作ったこのべストのようなよだれ掛け(写真でつけているもの)もその一つです」
──何がきっかけで、この試みを始めたの?
「弟は障がいがあるのですが、弟は自分で服を選ぶことができません。 母が毎日選んで着せているんですが、どうしても実用性重視になってしまうんですよね。そうすると、毎日同じ服になってしまう。それ以外にも、おおよそのことの選択肢がすごく限られていることに違和感を感じたのがきっかけです」
──加藤さんが考える、理想の服とは?
「障がいのある方に着てもらう服と聞くと、機能性重視と思う人が多いと思います。 でも私は、機能性はそんなに重要だと思っていません。たとえばよだれ掛けだって、よだれや食べこぼしがキャッチできればそれでいいんです。 そこにあれこれ機能を足してしまうと、むしろ着づらくなってしまうことがありますから」
──今の活動を通じて、どんなことが世の中に伝わればいいと思ってる?
「健常者の人の中にも、いろんな人がいると思うんです。 障がい者の人もその一部であって、選択肢が狭められたり制約を受ける社会でなくなればいいと思っています」
──そうした社会課題にもともと興味が?
「小学校のときに、将来は政治家になりたいと言っていたみたいです(笑)。学級委員長とかもやっていましたけど、今思うと単に目立ちたがり屋だからそう言っていたのかもしれません。じつはもともと、福祉には携わりたくないって思っていたんです。ただ、母が社会福祉士の資格を取ったりして積極的に動いている姿を見て、そして自分でもいろいろと学ぶうちに、解決しないといけない課題がたくさんあることに気づきました。母とは違うアプローチですが、 自分なりの解決策を模索している最中です」
──将来起業する予定は?
「まだまだ起業というレベルではないです。 昨年は、明治大学が産学連携協定をしている渋谷スクランブルスクエアのプログラム “QWSチャレンジ”に私のプロジェクトが採択され、そこでいろいろな方と意見を交わす機会を持つことができました。今年は、大学2年生になったのでもう一歩踏み出して 服作り以外にもたくさんのことに取り組んでいきたいと思っています。じつは9月にフェスを開催する予定なんです。 私の地元である名古屋のウェブマガジン『LIVERARY』と一緒に、音楽だけでなくアートやファッション、フードなどいろいろ組み合わせ内容にするつもりです。そこでは障がいのある方も自由に楽しんだり、パフォーマンスもしてもらいます。 障害のある方々が働いている就労継続支援の場所をアトリエにしてアートや雑貨を販売し、フェス会場と行き来することもできるように。また、障害のイメージを社会に受容される形にするのではなく、温かくてユニークな雰囲気に健常者の方も足を踏み入れてみてほしいなと。だって、フェスに行くと、普段おとなしい人もテンションが上がって変な行動を取ったりするじゃないですか。日常の中ではどこか線引きしている人も、そうした場では障がいのある方ともすんなり仲良くなったり、一緒に盛り上がったりできると思うんです。 以前、障がいのある子もたちのコミュニティで開催された音楽イベントでその一人が突然ステージに上がったとき、自由な雰囲気が作られてすごく盛り上がりましたから」
──そうした活動をする学生に対して、 明治大学は、どんな場所?
「私が専攻している政治経済学部だと、 中小企業論の授業がとても身になりました。 それから、服の大量生産による大量廃棄問題に取り組んでいる学生団体 “carutena”を運営しているのも明治大学の先輩で、コラボを行う予定になっています。そうしたつながりがどんどんと広がる場だと思います」
──今後どれだけ広がるか楽しみだね。
「今の活動を今後事業化して継続するためには、マネタイズの仕組みも必要です。 ビジネスも意識して障がい者と社会の接点を作っていきたい。でも学生のうちは、まず自分が興味を持って取り組めることからやってみます。どのみち、私ってすごくマイペースですから(笑)」
◆明治大学◆
加藤さんが通う和泉キャンパスは、新宿や下北沢に近い都市型キャンパス。明治大学は「個を強くする大学」を理念とし、2022年3月に完成した新校舎では、日本や世界から集まった学生が主体となって学びの日々を謳歌する
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■明治大学公式情報サイトMeijiNOWでも加藤さんのインタビューを公開中!
meijinow.jp/activity/focus/92697
■加藤さんのプロジェクト「SAFEID」の最新の活動はこちらからご覧ください
100banch.com/projects/safeid
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●文/安岡将文 撮影/稲澤朝博