2024.10.02
ウチの大学のスゴい人。〜僕がココにいる理由〜成城大学の遠藤海凪斗くん
今回紹介するウチの大学のスゴい人は、成城大学、法学部3年の遠藤海凪斗くん。遠藤くんは、2022年度「学長賞懸賞コンペティション」で最優秀賞を受賞。プラントベースフードのメニューを学生食堂で発売し、校内で食のバリアフリーを実現させた人。そんな遠藤くんに、大学のことや将来のことを聞いてみた。
すべきことを教えてくれた
友達の心のこもった一言
──プラントベースフードって、どんなもの?
「動物性の原材料を使わず、植物性の原材料だけで作る料理のことです。ビーガンフードと聞くと最近できたもののように思われがちですが、じつは日本には昔からあるものなんですよ。たとえばがんもどきという食べ物がありますが、あれは雁の肉を豆腐や野菜で再現したものですから」
──興味を持ったきっかけは?
「私が小学1年生のときでしたが、捨て犬だった保護犬を飼育したことがありました。その経験がきっかけとなり、全国でも珍しい動物政策という“動物×行政”について学べる成城大学法学部のゼミを志しました。勉強している中で、プラントベースの存在を知り、『動物について考えることができる食』として興味をもったのです」
──学食で取り入れたのは、どんな思いが?
「留学生の中には、環境や健康の面だけでなく、宗教的な理由などで動物性の食べ物を摂取できない人もいます。いざ学食のメニューを分析すると、彼らが食べられるメニューがなかったんです。同じ学生なのに不平等だなと感じ、学食でプラントベースフードを提供することを思いつきました」
──それで、成城大学が開催しているコンペティションに応募したとか?
「大学にさまざまな企画を提案する学長賞懸賞コンペティションに応募したところ、学生投票で多くの支持をいただきました。正直、みんなはそんなに関心がないのではと思っていたんですが、多くの票をいただいたことで自信が持てました」
──大学としても初の試みとあって、実現化までいろいろと大変なことがあったんじゃない?
「まさに手探りって感じでした。料理はもともと好きですが、ちゃんとお金をいただいて提供するとなると話は別。単に植物性の原材料を使っているというだけではダメで、美味しくなければいけません。さらに、学食は手頃な価格で提供しなくてはいけないので、予算に限りがあります。食堂のスタッフさんに知恵を借りながら、ちゃんと食堂ビジネスとしても成立する形を目指しました」
──どんな反響があった?
「アレルギーの関係で、入学して以来一度も学食を利用したことがない友達がいたんです。でもプラントベースフードの導入によって、初めて友達と一緒にランチができたって喜んでくれたんです。それが僕の原動力になっています」
──そうした経験を経て、現在はエシカル研究会を率いて他の大学への普及活動や企業とのコラボレーションなど、多岐にわたる活躍に繋がっているんだね。起業は考えなかったの?
「起業も考えたのですが、せっかく学生なのでもう少しいろいろなことを勉強しようと思ったんです。学生だからこそできることもたくさんありますから。成城大学はサポート体制が整っていますしね。プラントベースフードの学内販売においては、資金の提供や大学の職員の方々の協力なくしては実現できませんでしたから」
──今3年生だけど、将来はどんな仕事に?
「まだ決めていません。ただ、今多くの企業が環境問題に取り組んでいます。植物性の食材のみを使うレストランなども、充実していますしね。これからもっと広まってゆくと思いますので、学生のうちに得た経験を何かしらの形で生かせたらとは考えています。そのために、在学中に海外の環境問題対策などを積極的に見に行きたいです。あと、お酒が好きなので酒造メーカーさんとも何かできたらうれしいですね(笑)」
◆成城大学◆
東京都世田谷区にあるキャンパスに4学部11学科の学生が集い、学生同士の交流が盛んな大学。学習者中心主義の教育が伝統で、個性を生かして社会で活躍する卒業生が多い
●文/安岡将文 撮影/瀬田秀行